北米

2025.09.25 12:30

カナダ人による夏の米国旅行、前年比300万人減 観光損失額は4000億円超か

米ミシガン州デトロイトとカナダ・オンタリオ州ウィンザーを結ぶアンバサダー・ブリッジの夕景(Getty Images)

米ミシガン州デトロイトとカナダ・オンタリオ州ウィンザーを結ぶアンバサダー・ブリッジの夕景(Getty Images)

カナダ統計局によると、この夏(6~8月)米国を訪れたカナダ人旅行者数は、2024年比で延べ300万人以上減少した。大半は国境をまたいだ自動車旅行で、前年同期比約270万人の減少となった。

カナダ人にとって車で米国を訪れることは長年、ぜいたくな休暇というよりも、ちょくちょく遊びに行く気軽なお出かけという位置づけだった。週末は国境を越えてすぐのバッファローでショッピングを楽しみ、デトロイトへ野球を観に行く。夏の家族旅行も、ニューヨーク州北部なら比較的安上がりでエコな旅の計画を立てやすい。

2025年の夏は、この伝統がいかに脆弱なものかを浮き彫りにした。これまで数十年にわたり安定していたカナダからの訪米者数は、第2次トランプ政権発足以降の数カ月ですっかり激減。代わりにカナダ人は旅行資金を国内か米国以外の海外で使うようになった。

数字でみる米・カナダ間の旅行動向

2025年6月、7月、8月のカナダ人の米国への延べ旅行回数はそれぞれ200万回(24.1%減)、207万回(28.2%減)、232万回(26.3%減)で、各月とも2024年の水準を大きく下回った。

最も急減したのは車の流れで、6月は延べ150万台(32.3%減)、7月は同168万台(36.9%減)、8月は同190万台(33.9%減)と、いずれも前年比3分の1の減少だった。

米国への航空旅行(延べ回数)も減少した。6月は53万8400回(15.7%減)、7月は38万3700回(25.8%減)、8月は42万3100回(25.4%減)で、3カ月間で計37万7500回の減少となった。

一方で、カナダ人の海外渡航は増加。6月は延べ88万2300回(7.2%増)、7月は同100万回(5.9%増)、8月は同120万回(6.6%増)と、長距離旅行は前年比で着実な伸びを示した。

対照的に、米国居住者のカナダへの空の旅は、6月に延べ66万5700回(2.5%増)、7月が同71万4700回(2.1%増)、8月は同58万9700回(3.6%減)と、カナダ側の大幅な減少ぶりに対して比較的安定した増減傾向を見せた。

米国からカナダへの越境自動車旅行は減少したが、6月が延べ141万回(6.8%減)、7月は同179万回(7.5%減)、8月は同179万回(4.5%減)と、カナダから米国への自動車旅行の大きな落ち込みと比べて、減少幅ははるかに小さかった。

米国経済への打撃は4000億円超か

延べ300万人のカナダ人旅行者が米国を訪れなかったことで、米国経済にはどれほどの影響が及んだのだろうか。

カナダ統計局の8月の発表によれば、2025年第1四半期におけるカナダ人の米国旅行1回あたりの平均支出額は944ドル(約14万円)だった。これは日帰り旅行(平均171ドル=約2万5500円)と宿泊旅行(平均1422ドル=約21万2000円)の金額を均したものだ。

これを今夏の米国旅行回数の減少数(延べ305万回)と掛け合わせると、わずか3カ月間で米国が失った観光収入は推定28億3000万ドル(約4210億円)となる。

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翻訳・編集=荻原藤緒

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