「つくり手」の時代が来る
林は、漫画家を育てるための労力を惜しまない。それは、作品至上主義、作家至上主義でありたいからだ。
「アニメの現場では、どんどん影響力を増している制作会社がいくつかあります。そりゃそうですよね、つくれることがいちばん強いわけですから」
漫画業界においてはまだ「ジャンプ」や「マガジン」といったブランドが強いが、将来的には「つくり手」が強くなる時代が来ると考える。その時、作家と組んで面白いものをつくっていれば勝ち残れるし、より多くの人に届いて世界の壁も越えられる可能性がある。
「だから、作家を育てるのにカロリーをかけるんです。今43歳ですが、とりあえず、50歳までは体力も続くだろうし、感性もそんなにゆがまないと思うので、思いっきりやってやろうと決めています」
林は、より多くの人が漫画を描けるようになることは社会にとってポジティブなことと考え、23年には、絵が描けなくても漫画のネームがつくれるアプリ「World Maker」を立ち上げた。また、手がけた漫画作品の魅力をより多く、より広い層に届けるべく、作品展や展示会のあり方も模索し続けている。
「東京で大規模展をやっちゃうと、大きな会場がない地方にもっていけなくなるので、小規模のポップアップストアと展示会を何度もやる方向を模索してもいいのかなと考えています。通常、展示会の入場料は2,000円ぐらいですが、固定観念はなくして、500円だったらどうなる? 200円だったら? とか、いろんな実験ができるなと夢想しています」
現在VUYは2期生を募集中。林は全国5都市とオンラインで入居希望者向けの説明会を開いた。2期生が入る26年4月にはアパートが満室となり、さらに多くの漫画家が切磋琢磨できるコミュニティになる予定だ。
敏腕編集者は、これからも固定観念に縛られない仕掛けでひとりでも多くの漫画家を育て、おもしろい作品をつくり、世界中に届けていく。
りん・しへい◎ミックスグリーン代表取締役社長。2006年、集英社入社。「月刊少年ジャンプ」「ジャンプSQ.」「ジャンプ+」編集部を経て22年に独立。現在は連載作品を10本抱えるほか、アニメ・舞台・イベント・アプリの監修なども手がける。


