米国優位の終焉が転換点と指摘
モントリオールに拠点を置くBCAリサーチのチーフストラテジストであるマルコ・パピックは、このドル安こそが株と金が同時に上昇する最大の要因だと述べる。
「答えはこうだ。ドルが売られている」とパピックは金と株が同時に輝く理由を説明する。パピックによれば、ドルは長年、米国経済が恒常的に優位であるという期待に支えられてきた。その多くはパンデミックへの財政対応によるもので、数兆ドル規模の政府支出が家計のバランスシートに積み上がった。しかしその資金はすでに使い尽くされた。
同時に、米国の関税や貿易摩擦により、他の国や地域は、米国の需要に依存するのではなく、自らの経済を刺激する必要に迫られた。パピックは米国優位の終焉を転換点と呼び、「通貨は上下する。より大きな誤りは、米国資産が常に優れた成果を上げると考えることだ。それは不可能だ」と語る。
インフレ鈍化とドル安の同時進行を強調
ニューヨークに拠点を置くペイブ・ファイナンスの共同創業者兼チーフマーケットストラテジストであるピーター・コーリーも同じ見方を示す。彼は、2022年以来インフレ率が低下し、それが企業利益を支え株価を押し上げたと指摘する。同時に、ドル安が金をより魅力的にしたという。「2つの顕著なことが同時に起きている」とコーリーは述べる。「インフレが抑えられていることは株に強気材料だ。それと同時に、ドル安が投資家を金に向かわせている」。
1970年代初頭との類似性、インフレ再加速なら株暴落の危険も
コーリーは現代と1970年代初頭との類似性を指摘する。1970年から1972年にかけてインフレ率は低下し、株が上昇した。しかし1973年にはインフレが再加速し、FRBは1年以内に金利を2倍に引き上げ、S&P500は半分になった。彼は、もしインフレが再び上昇し始めれば、現在の市場も同じ運命をたどる可能性があると警告する。また、「投資家は50年前よりもFRBの動向に敏感だ」と彼は語る。
金と株の同時上昇は一時的、経済の行方がどちらを支えるか決める
金と株の同時上昇はまれな現象である。それはドル安と不透明な経済見通しの双方を反映している。この関係は続く可能性もあるが、歴史が示すところによれば永遠には続かない。いずれはどちらかがもう一方から乖離することになる。どちらが持ちこたえるかは、経済が持続的成長へ進むのか、それとも再び停滞するのかにかかっている。


