B型肝炎は肝臓の線維化や肝不全、肝臓がんを引き起こし、最悪の場合は死に至る病気だ。現在、米国には200万人以上のB型肝炎感染者がおり、感染リスクは誰にでもある。だからこそB型肝炎ワクチンの接種が、子どもの未来を安全かつ効果的に守ることにつながる。
そもそもこのワクチンの目的は、集団免疫を得ることで社会全体での蔓延を防ぐことであり、必ずしもリスクが明確な人だけが接種するものではない。歴史的に見ても、すべての新生児を対象としたB型肝炎ワクチン接種の有効性が示されている──1991年以前は高リスクの新生児のみに接種されていたが、この方法では事前検査でのスクリーニングが難しく、感染を十分に防ぐことができなかった(ABC News)
CDCによれば、ワクチンを接種していない新生児がB型肝炎に感染した場合、10人中9人という高確率で慢性化してしまう。米国ではワクチン接種がすべての新生児に推奨されるようになって以来、症例数が大幅に減少しており、具体的には1991年以降、10年以内に小児のB型肝炎有病率は68%減少、2014年までに82%減少という成果をあげている。現在では母親から新生児に感染するケースは年間20件未満に抑えられており、これはまぎれもなくワクチンのおかげだ。
ポール議員は自身も医師であるものの、その主張は科学的根拠に基づいていない。政治やソーシャルメディアにおける彼の影響力が極めて大きいことを考えると、その発言は公衆衛生に壊滅的な影響を及ぼしかねない。ポール議員は上院国土安全保障委員会の委員長を務め、Xだけでも600万人のフォロワーを持つ。彼の不正確な言説はワクチンに対する国民の信頼を損なわせ、公衆衛生当局への不信感を植えつける恐れがある。
こと健康に関する誤情報に潜む深刻なリスクと、それが何百万人もの米国人の生活に及ぼす影響の大きさを考えると、虚偽の言説を広める政治家は責任を問われなければならない。誤情報を広げながら、「メイク・アメリカ・ヘルシー・アゲイン」など、ありえないのだ。


