私たちは頑張ることがその事実を雄弁に物語ると想像したがる。プロジェクトを完成させ、期限内に納品し、期待以上の成果を出せばその成果は一目瞭然で、適切な人たちがそれに気づいてくれるに違いないと期待する。だが実際には、目に見えることはキャリアアップの酸素だ。可視性がなければ、どんなに優れた仕事でも静かに酸素不足で息絶えてしまう。
リーダー養成と調査などを手がけるリーダーシップIQが3500人以上の従業員を対象に行った調査(Career Growth or Stalled Progress)では、過半数の人が所属する会社が真のキャリア成長を促進しているとは思わないと答えている。その理由の1つは、最善の努力がほとんど認められないということだ。意図的に無視されているわけではない。多忙な組織では個人の貢献に目を向けることはほとんどないだけだ。そして、従業員が自分の成果のアピールを他者任せにすると、出世を左右する評価基準そのものが見えなくなってしまう。
ハードワークと評価の間にあるギャップこそ、コミュニケーションがキャリアにとって重要な意味を持つ場面だ。自分の進歩を伝えることは生き残るためのスキルだ。もちろん問題となるのは自慢しているように思われることなく自分の成功をどう「見える化」するかだ。その課題をさらに深く掘り下げるため、コミュニケーションとプレゼンスを研究してきた2人の専門家に実践的なアドバイスを聞いた。
(1)会話の切り口に気を使い、答えを用意する
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルでベストセラーとなった『The Long Game : How to Be a Long-Term Thinker in a Short-Term World』の著者ドリー・クラークは、プロフェッショナルが自然な前置きなしに我を忘れて自分の業績をベラベラと話す例を数多く見てきた。「誰かが何の前触れもなく、自分がスピーチをした権威あるイベントや有名な友人について話し始めると、当然自慢しているように聞こえる」とクラークは話す。
クラークは、会話の切り口に注意を払い、答えを用意しておくことをアドバイスする。「ほとんどの人が見逃している、労力をかけずに成果を得る方策は『最近どうしてた?』という問いに対する答えを用意しておくこと」とクラーク。「皆この質問を頻繁に受けるが、ほとんど誰もその答えを準備をしていない。相手から聞かれたのだから、本心から答えても自慢にはならない」。
クラークが言いたいのは、文脈が自己PRを自然な会話に変えるということだ。成功に必要なのはメガホンではなく、対話に入る適切なタイミングだ。



