経営・戦略

2025.09.25 15:30

トランプ関税が直撃 収益96%がココナッツウォーター、原材料も熱帯諸国依存の米飲料大手

セレブ投資家が支えた創業、IPO後の再建と新製品拡大

2003年にマンハッタンのバーで出会った2人の起業家仲間が立ち上げたVita Cocoは、マドンナやデミ・ムーア、マシュー・マコノヒーといった著名人投資家の支援を受けたこともあり、最初の10年間で早くも成功を収めた。しかしその後は成長の痛みが襲った。利益率の低さや、流通面での障害、そして波乱含みの2021年の新規株式公開(IPO)によって、多くの機関投資家は距離を置いた。

それでも過去2年間で同社は規律ある再建を進め、新型コロナのパンデミック後にサプライチェーンを強化した。また製品ポートフォリオも拡大し、プロテイン入り飲料の「PWR LIFT」やアルミ缶入りの「Ever & Everウォーター」、そして直近ではココナッツミルクを使った飲料ライン「Vita Coco Treats」を投入している。

Vita Cocoは、トランプの関税攻勢が始まるまでは、ラッセル2000銘柄の中で羨望の的とされる存在で、2024年にはフォーブスの「米国の最優良小型株」ランキングでも上位に入った。同社の株価はIPO時から133%上昇し、2022年の安値からは5倍に跳ね上がっている。

Vita Cocoの最高財務責任者(CFO)のコリー・ベイカーは、7月30日に開催された第2四半期の決算説明会で、米国の通商当局に対して正式な関税免除の申請を進めていることを明かし、もしその要請が認められなければ、投資家は同社の値上げを覚悟せざるを得ないことを事実上示唆した。「もしブラジル産に50%の関税が課された場合、最終的には価格転嫁を行わざるを得ないだろう。しかし、最悪のシナリオであっても、当社はシェアを維持できると考えている」と彼は述べていた。

評価が割れるウォール街、空売り投資家の標的となるVita Coco

ウォール街では、Vita Cocoをカバーする10人のアナリストのうちの6人が「買い」と評価し、残る4人は「ホールド」と評価している。しかし投資家の間では、ホールドは事実上「売り」と解釈されることも多い。同社株にはすでに空売り筋が集まり始めている。

英国に拠点を置く空売り投資家NINGI Researchは、3月に発表した23ページに及ぶレポートで、Vita Cocoを複数の根本的な課題で批判した。そこには、多角化の試みの失敗やサプライチェーンの混乱、CEOや経営陣による巨額の株式売却などが含まれていた。その主張の柱は、企業としての成長ストーリーが持続不可能なものに過ぎないというもので、「Vita Cocoは単一の事業に依存しており、事業のオペレーションも混乱している」と記されていた。

コストコ契約喪失で売上36.5%減、空売り筋の批判が現実に

また、中でも最も強烈なインパクトを与えたのは、Vita Cocoがサプライチェーンの管理を誤ったために、「コストコとの大口プライベートブランド契約を失った」という指摘で、それが今後の収益に大きな打撃を与えるとされた。

Vita Cocoは当初、このレポートを「不正確かつ事実を歪めたものだ」と公に反論した。しかしその後の公表資料や業績は、コストコとの契約の喪失に関するNINGIの主張を裏付ける形となった。同社の2025年第2四半期決算では、プライベートブランド売上が36.5%も大幅に減少したことが確認された。

現在、コストコの自社ブランド「Kirkland Signature」のココナッツウォーター12本入りは12.99ドル(約1900円)で販売されている。一方、ターゲットではVita Cocoの12本入りが19.59ドル(約2900円)と、価格差は歴然だ。さらにVita Coco自身も、2024年には在庫不足が原因で「プライベートブランドのサービス水準が容認できない水準に落ち込んだ」と認めている。

揺るがない強気派の楽観論、「消費者は喜んで対価を払う」と語る創業者

それでも強気派の投資家は、同社の主力であるココナッツウォータービジネスは健全だと主張しており、常に楽観的な共同創業者のマイケル・カーバンも動じていない。「当社の売上は、引き続き非常に好調だ。消費者は喜んで対価を払うと思う」と、関税関連の値上げに触れながらカーバンは語る。

「我々の製品は、木から得られる自然の産物であり、研究室で作られるものではない。そして主要なスポーツドリンクの3.5倍の電解質を含んでいる」と彼は語った。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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