国際報道の舞台として取り上げられ、ボーダーツーリズム(国境観光)の最適スポットでもある中国遼寧省の丹東という町は、意外にも誰もが訪れることのできる場所だという話を、前回のコラム「今回も金総書記が特別列車で通過した中朝国境の町、丹東4つの橋」で書いた。
では、どうやって行くのか。まず中国の大連に飛ぶことになるのだが、同地は現在、羽田、成田、関西、中部、福岡、広島、仙台と日本の7空港から直行便が運航しており、フライト時間は2時間~3時間ほどだ。
そして大連からは高速鉄道で約2時間。フライトを選べば、日本からその日のうちに丹東に着く。
大連と丹東を結ぶ高速鉄道「丹大城際鉄路」が開通したのは、いまから10年前の2015年12月のことで、それ以前は高速バスや車で4時間近くかかっていたのだが、一気に移動時間が短縮されている。
名物のハマグリBBQと焼肉
そんな丹東の魅力を観光パンフレット風のコピーにすれば「歴史とグルメと温泉の町」だろう。
筆者は以前、大阪の島之内で見つけた丹東出身の人が営んでいた海鮮水餃子の店について「驚きの『辺境ガチ中華』の超レア冷麺を埼玉・西川口で見つけた」というコラムを書いたことがある。そこでは、店で供された魚を餡にした水餃子と丹東のグルメの特徴について次のように述べている。
<(その店は)中国の地方都市によくある個人経営の素朴な食堂と変わらない風情で、サワラ餃子が看板メニューということだった。丹東から近い、日本人にもなじみのある大連には、海鮮入りのご当地餃子がある。黄海でとれる黄魚(日本でいうイシモチ)やイカ、サザエなどの餃子が知られるが、実はサワラ餃子こそ、最も庶民的なメニューなのだ>
その後、その店はすぐに閉店したことから、こうした日本での中国のローカル料理との稀有な出合いを「一期一会ガチ中華」と呼びたくなったとも書いた。
そんな海鮮グルメの町、丹東市内にはBBQレストランがいくつもある。なかでも地元で人気なのは「長白山炭烤」という1994年に中国朝鮮族のオーナーが始めた老舗で、名物のハマグリBBQと焼肉の店だ。
カキやホタテ、エビなどの海鮮と中国の東北地方ならではの種類の豊富なキノコ類、牛肉や羊肉のさまざまな部位が炭焼きでいただくことができる。さらに黄海でとれたヒラメも刺身で味わえるのだ。
この地でハマグリやアサリなどの貝類が採れるのは、北朝鮮との国境を流れる鴨緑江下流域だ。旬の季節は5月から7月くらいまで。干潮時になると、川面はほぼ砂地となり、地元の人たちはここぞとばかりに潮干狩りを始める。
遠く対岸に視線を移すと、北朝鮮の住民も一斉に潮干狩りを始めている光景を見ることができるのも面白い。おそらく、このとき両岸で取れたハマグリの多くは、丹東をはじめ中国の市場やレストランに運ばれるのだろう。
丹東の人は海鮮を中華風に濃く味つけせず、素材を生かした食べ方を好むので、日本人の口にも合う。これらの海鮮BBQの店にやってくるのは、家族連れも多く、常連客などは店の外にテーブルを並べ、川風に吹かれながら食事を楽しんでいる。



