サイエンス

2025.09.25 17:00

220億羽、世界で最も数が多い鳥ニワトリが人類に突きつける難題

Shutterstock.com

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世界で最も個体数が多い鳥は、どの種かご存知だろうか? 

スズメ? ハト? カモメ? すぐに思い浮かぶのはこんなところだろうが、これらの個体数は、正解の種に遠く及ばない。問題の鳥は、裏庭で見かけたり、森の小径でさえずりを耳にすることは少ない。

答えはニワトリ(学名:Gallus gallus domesticus)だ。世界のニワトリの総個体数は、実に推定約220億羽に上る。地球上のどの種の鳥よりも数が多く、2位以下に大差をつけている。

慎ましいニワトリが、いかにして世界で最も数の多い鳥になったのか、以下に見ていこう。

異例ずくめの鳥

ニワトリの祖先は、東南アジア原産の野鳥であるセキショクヤケイ(学名:Gallus gallus)だ。数千年にわたる家畜化プロセスを通じて、人類はニワトリの繁殖をコントロールしてきた。肉のため、卵のため、さらには外見や行動のために、彼らを選択交配してきたのだ。

ニワトリの祖先、東南アジア原産の野鳥セキショクヤケイ(Shutterstock.com)
ニワトリの祖先、東南アジア原産の野鳥セキショクヤケイ(Shutterstock.com)

現在では、家畜化されたニワトリには数百もの品種が存在しており、いずれも特定の目的に合わせて遺伝的に改良されている。急成長型のブロイラー種は、主に食肉用として飼育されている。産卵数の多い品種もいれば、実用性よりも容姿の美しさが重視される観賞用の品種も存在する。

ニワトリは、途方もない遺伝的・形態的多様性を示すが、それでも彼らは1羽残らず、一つの共通祖先に由来する。さらに興味深いのは、すべてのニワトリが、ほぼ全面的に私たち人間のニーズによって方向づけられた、たった一つの進化的経路をたどってきたことだ。

ほかの鳥の場合、その個体数はおおむね、自然の作用(つまりアクセスできる食料、捕食者、生息環境が課す制約など)によって制御される。だが、ニワトリはグローバルな農業という手段を通じて、数十億羽単位で養殖され、個体数を増やしてきた。

つまり、生物種としてのニワトリの圧倒的成功は、私たち人間の成功と直接結びついているのだ。

1年間に飼育され屠殺されるニワトリは500億羽を超える

「220億」という数字をそのまま聞くと、当てずっぽうのように感じるかもしれない。だが、少し視野を変えて見ると、いかに途方もない数であるかが実感できる。なにしろ、地球上のすべての人に3羽ずつニワトリを配ることができるのだ。

けれども、国連食糧農業機関(FAO)の推計によれば、1年間に飼育され屠殺されるニワトリは500億羽を超える。つまり、いまこの瞬間に生きているニワトリの数も途方もなく多いが、今年に入ってから生まれ、今年の終わりまでに屠殺されるニワトリの数は、さらに驚くほど多いのだ。これは、誕生から屠殺までのサイクルが数カ月と短く、1年間で何回も繰り返されるためだ。

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翻訳=的場知之/ガリレオ

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