キャリアの罠となる思い込みその4:「期待されているレベルに達すればそれで十分」
これは最も一般的だが、最大級に危険な思い込みだ。多くのプロフェッショナルは、「期待されているレベルを継続的にクリアしていれば、自然とキャリアアップがかなう」と決めてかかっている。しかし、期待されているレベルを達成するだけでは、合格ラインに達したにすぎない。失敗は防げるが、キャリアアップに必要な勢いは生まれない。
筆者が創業したリーダーシップ研修会社、Leadership IQ(リーダーシップIQ)の最新調査でも、こうした認識上のギャップの大きさが浮き彫りになった。
この調査で我々は、全米の企業484社で管理職を務める7225人に対し、「現時点で自身の部下のうち、仕事で素晴らしい成果を挙げている者の割合は何%か?」という質問を投げかけた。
その回答は、「3人に1人をようやく上回る程度」というものだった。具体的には、「仕事で素晴らしい成果を挙げている」と上司が評価した部下の割合は、全体の36%にすぎなかった。一方で、「そうしたレベルに達している部下は、全体の半数に満たない」と回答した管理職の割合は3分の2近く(62%)に達した。
素晴らしい成果を挙げた者とそうでない者の違いは、人並外れた才能ではない。私たちの調査対象となった管理職は、違いは行動にあると指摘している。部下のうちで成功を収めているのは、自発性を持ち、変化の担い手となり、チームの他のメンバーを支援する者だ。また、日々の業務をより幅広い領域でのインパクトに結びつけている者が、「素晴らしい成果」を挙げていると評価された。
一方、合格ラインに達しただけで満足している者は、「その他大勢」とひとまとめにされてしまう。頼れる存在ではあるが、記憶に残らないからだ。
ここから導き出される結論は明らかだ。期待されているレベルに達しただけで満足していては、全体の中で埋もれてしまうということだ。大半の管理職はこうした部下を、頑張れば実現可能なレベルまで行っていないと評価している。
「悪くない」レベルから「素晴らしい」レベルへと飛躍すれば、キャリアを前進させられる。そのためには、単に自分に与えられた仕事をこなすだけでなく、周囲の人たちすべての仕事をレベルアップさせることが必要になるだろう。
期待されるレベルを満たすことを、目標にしてはいけない。目標とすべきは、素晴らしい成果を挙げることだ。ここで必要なのは、先を読んで動き、インパクトをもたらし、チーム全体のレベルを上げるような成果だ。
「安全圏」という幻想を打ち破るために
キャリアアップの妨げとなる思い込みは、決して常識外れには聞こえない。「自分の“車線”からはみ出すな」「安全策をとれ」「期待されるレベルを満たすようにしろ」と、実に穏当な方針のように聞こえるものばかりだ。
だが、フィリポヴァやクラインが教えてくれたように、こうした思い込みが与えるのは、「安全」の幻想だ。真の成長は、自分の周囲を覆うバブルを破り、適切なリスクを受け入れ、「まずまず」という線を突破することにある。
そうすることで、自分で限界を決めてしまうことはなくなり、新たなドアが次々に開かれるようなキャリアを築くきっかけになるはずだ。


