キャリアが停滞する原因が、当人の才能の欠如にあることは稀だ。むしろ、気付かないうちに身についている「思考の癖」が原因になっていることの方が多い。
つまり、安心感はあるが、実はその人を身動きが取れない状態に陥らせている「思い込み」が存在しており、それが原因になっている、ということだ。気付かないあいだに染みつくこのような思い込みは、最も優秀なプロフェッショナルさえも妨害し得ると、数十年にわたるリーダーシップ研究は示している。
キャリアコーチとして活躍するアニ・フィリポヴァやデイヴ・クラインのようなビジネスリーダーも、実際にこうしたキャリアの落とし穴を経験してきた。両氏の体験談は、こうした思い込みがどれだけ高くつくかを教えてくれる。
キャリアの罠となる思い込みその1:「自分を取り囲む“バブル”が世界のすべて」
アニ・フィリポヴァは、かつて世界有数のグローバル金融機関、Citi(シティ)でアジア地域のトレジャリー&トレード・ソリューションズ部門の最高執行責任者(COO)を務め、現在はポートフォリオ・キャリアのストラテジストとして活動すると同時に、ポッドキャスト「Change is possible」とそのコミュニティの創設者でもある。
フィリポヴァは筆者に対し、自身が目にした最大の罠は、各業界に存在する、外の世界から隔絶された“バブル”だと語った。
「プロフェッショナルの大半は、自身のキャリアのすべての期間を、自身が属するバブルの中で過ごす」と、フィリポヴァは説明する。「こうした人たちは、勤務先では100人の同僚と知り合いで、さらに自身のセクター内に200人の知人がいるかもしれない。そしてほかの世の中も、自身を取り巻く界隈と同じように動いていると思い込んでいる。だが実際には、世界には35億人のプロフェッショナルがいて、自分が思いもしないようなやり方で問題解決に取り組んでいる」
フィリポヴァ自身のブレイクスルーも、同業者のバンカーから来ることは決してなかったという。「シティでは、他のバンカーからブレイクスルーのきっかけが得られることはなかった。気付きを与えてくれたのはむしろ、アジャイルな思考を教えてくれたスタートアップの創業者や、視覚に訴えるストーリーの語り方を見せてくれたアーティスト、ネットワーク効果を解説してくれたテック系企業の最高経営責任者(CEO)だった。成長は、異なるものが交わるところで生じるものだ」
これは鋭い指摘だ。内輪でしか通じない業界用語を話しているばかりでは、同じアイデアの焼き直しを続けることになる。バブルの外に踏み出せば、人脈を広げられるだけでなく、問題に対する視点の変換にもつながり、まったく新しい解決法が見えてくるはずだ。
ゆえに「自分の“車線”を守り続けているようでは、ブレイクスルーは生まれない」ことを肝に銘じておこう。大きな変化は、異なるものと交わる“交差点”から生じるのだ。



