クリスティーナ・ライアンにとって、アート作品を収集することはキュレーションをすることと同じ、「つながりを持たせること」だ。美術史学者である彼女は何十年も前から、東南アジアの文化的景観に夢中になっている。
女性アーティストが手掛けるアート全般を修士論文のテーマとし、アイデンティティと歴史、コミュニティについて探求する作品への情熱を持ち続けてきたライアンは、その鋭い観察眼とともに、世界的な舞台での注目に値するストーリーを持ったアーティストたちを支援している。そして、女性アーティストとこの地域の期待の新人たちの「声」を支援するコレクションを構築してきた。
その彼女に、東南アジアで開催されるアートフェアの重要性、そしてこの地域のアートをサポートする理由を聞いた。
──最も関心を持っているアーティストを教えてください。
修士論文のテーマにして以来、関心を持ち続けているのは、ジェンダーに基づく視点から植民地時代の歴史を探求しているアーティストや、女性の表現、女性のアイデンティティ、移住、植民地時代後のナラティブ、コミュニティを基盤とした活動などをテーマにしている域内出身の現代アーティストです。
主にこうした事柄に向き合っているのが、私にとっては馴染み深いアーティストとなっているスーザン・ヴィクターやチトラ・サスミタ、オクトラ、アイサ・ホクソンなどです。
──域内で開催されるアートフェアには、どのような役割が期待できるでしょうか?
シンガポールにとどまらず、地域全体のアートエコシステムが継続的に発展していくために重要なもののひとつです。アートフェアは、国際的なアーティストたちに加えて、域内の才能あるアーティストを紹介するための確かなプラットフォームを提供するものであり、アーティストたちとコレクター、ギャラリーにとって重要な、つながりを深めるものです。
アートフェアは、そもそも商業的な目的で開催されるものです。ですが、文化的ナラティブを広め、新たなオーディエンスにさまざまな声と活動を紹介する助けになっています。
──アートSGなど、シンガポールで開催されるアートフェアについての考えを聞かせてください。シンガポールは、地域のアートハブになれるでしょうか?
アート・バーゼル香港ほど大規模ではないアートSGは、東南アジアと各国のアーティストたちが、よりバランスの取れた割合で参加するフェアになっています。アート・バーゼル香港には、中国と北アジアのアーティストが中心になる傾向がみられます。
2019年には、アート・ステージが開催直前に突然、中止となりました。事実上、それによって生じた空白を埋め、シンガポールのアートエコシステムに活力を与えることに重要な役割を果たしてきたのが、アートSGです。



