トランプの関税はすでに多くの業界に深刻な影響を及ぼしているが、今マイクロソフトとXboxに起きていることほど奇妙な事態はあまりない。
マイクロソフトは最初にコンソールゲーム機の価格を大幅に引き上げたメーカーとなった。そして今回、同社は経済状況を理由に再び値上げを発表した。その価格は滑稽なほど高く、もはや意図的にハードウェアの販売を抑え込んでいるのではないかと疑いたくなるレベルだ。以下が、最初の値上げ価格と、今回さらに引き上げられた新価格である。
・Xbox Series S(512GB):380ドル → 400ドル(約5万9200円)
・Xbox Series S(1TB):430ドル → 450ドル(約6万6600円)
・Xbox Series X デジタルモデル:550ドル → 600ドル(約8万8800円)
・Xbox Series X ディスクドライブモデル:600ドル → 650ドル(約9万6200円)
・Xbox Series X(2TB):729ドル → 800ドル(約11万8000円)
マイクロソフトは「誰かが600ドルから800ドルをXbox Series Xに支払う」と考えているようだ。ちなみに、このコンソールは2020年に500ドルで発売されてから、ほぼ5年が経過している。
ソニーも関税の影響を免れてはいない。同社は値上げをしばらく遅らせたが、最終的に以下の価格に落ち着いた。
・PlayStation5 デジタル・エディション:500ドル(約7万4000円)
・PlayStation5:550ドル(約8万1400円)
・PlayStation5 Pro:750ドル(約11万1000円)
結果として、状況は似たようなものになった。PS5は2020年にXbox Series Xとほぼ同時に発売されたが、その価格はXboxよりも100ドル安い価格だった。それが今では、両機種ともに発売時の価格より100ドル高くなっている。
しかし、なぜXboxの方がより悪い状況なのか。理由は、PlayStationと違って、XboxはPS5 Proのような性能強化版を出していないからである。現状では、2TBのXbox Series Xが、同じく2TBのPS5 Proより50ドルも高い。
さらに、マイクロソフトが価格を極端に引き上げているのは、すでにソニーや任天堂に大きく負けているコンソールであるという点もある。推計によれば、Xboxはソニーに少なくとも2対1、あるいは3対1以上の差をつけられている。また、同社の四半期決算ではハードウェア販売における二桁パーセントの減少が繰り返し報告されている。加えて、マイクロソフト自身が、Xboxは必ずしも必要ないものだとほのめかしており、実際にゲームはPCやクラウド、さらにはPlayStationでも提供されている。
マイクロソフトは特に中国でのXbox部品製造において打撃を受けている。しかし、ここまで価格をつり上げてしまえば、もはや自らのコンソール事業を消し去ろうとしているのではないかと思えるほどだ。ハードウェアの利益率を高める、あるいは損失を抑えるために、積極的に購入を思いとどまらせるような価格設定をすることに意味はあるのか。その答えを知っているのはマイクロソフトだけである。



