米国において、連邦政府は「世界最大のテクノロジー投資家」であり、その年間歳出は6.8兆ドル(約1006.4兆円)に上る巨大市場で、日本の国家予算の10倍以上に相当する。この巨大市場を主戦場とするのが、政府向け事業を行う企業(政府請負企業)に特化して投資するプライベート・エクイティ(PE)ファンド、Veritas Capital(ヴェリタス・キャピタル)だ。トランプ政権下で進む「政府効率化」の波は、政府請負企業の淘汰と再編を促しているが、ヴェリタスはこの構造変化を巧みに利用し、逆境を乗り越えるどころか成長の好機に変えている。その投資戦略の核心に迫る。
市場低迷の中でも、ヴェリタス・キャピタルが約2.1兆円を調達
ポートフォリオ企業の収益の大半を政府支出に依存するPEにとって、トランプ政権の「政府効率化省(DOGE)」は成長見通しに陰を落とす存在と見られがちだ。しかしヴェリタス・キャピタルのラムジ・ムサラムCEOは、「実際にはその効果はまったく逆だ」と主張しており、投資家も彼の説明に納得している。
ヴェリタスは先日、第9号の旗艦ファンドをクローズしたが、その調達額は今年のPE業界が低迷する中で最大級の144億ドル(約2.1兆円。1ドル=148円換算)にも及んだ。このファンドにより、同社の運用資産は540億ドル(約8兆円)以上に拡大し、ヘルスケア、防衛、教育、インフラ、フィンテックといった厳しい規制を受ける分野のテクノロジー企業への投資余力を高めた。
医療データ分析で、制度改革に対応する基盤を提供
ヴェリタスのポートフォリオ企業は、年間250億ドル(約3.7兆円)の売上を上げており、その約60%が政府機関からの収益で、残りは企業との取引を中心とするB2B事業によるものだ(ヴェリタスはB2C企業には投資していない)。ムサラムは、同社の投資先が企業の無駄な支出を削減する「無くてはならないテクノロジー」を持つ企業のみだと述べている。
「今の政権は、本来ならずっと前に行われるべきだった取り組みを実行しており、効率だけでなく質も重視している」とムサラムはフォーブスに語った。「その焦点は、いかにしてテクノロジーを活用してコストを削減し、よりよい結果を生むかということだ。それが政権の目指す方向であり、我々の目指す方向とも重なる」。
現在、ヴェリタスのポートフォリオに含まれる企業には、医療データ分析を手がけるCotivitiが挙げられる。世界最大級のPEファンドであるKKRは昨年、同社の評価額を110億ドル(約1.6兆円)とする取引で、株式の一部を取得した。また、米国各州のメディケイド機関やその他の公的医療プログラムにソフトウェアを提供するGainwell Technologiesも名を連ねている。



