2025年8月25日発売のForbes JAPAN10月号は「30 UNDER 30」特集。30歳未満の次世代をけん引する若い才能に光を当てるアワードで、米『Forbes』が11年より開催し、世界的に注力している企画だ。北米版のほか、欧州版、アジア版、アフリカ版など81カ国・地域を対象に開催し、世界規模へと成長している。『Forbes JAPAN』でも18年より開催し、7年間で総計300人を選出してきた。これまでの受賞者は、ロサンゼルス・ドジャースで活躍する大谷翔平、ボクシング世界4階級制覇王者の井上尚弥、世界的ピアニストの反田恭平、起業家の坪井俊輔(サグリ)など、世界を舞台に活躍するチェンジメーカーたちだ。気候変動、地政学的緊張、デジタル格差など世界的課題があるなかで、今年の受賞者たちも各々が「自分が思うより良い未来」を目指す30人だ。彼ら彼女らが想像し創造していく「新しい社会、新しい経済」から見えてくるものこそが日本の未来の希望になる。
血紅色に染まった純白なドレスに女性の再生の思いを込めた。ファッションデザイナー・八木華は今、新境地を迎えている。
「最近、やっと『ファッションデザイナー』と自信を持って名乗れるようになったんです」。そう笑顔で答えるのは、19歳の時に欧州最大のファッションコンペ「ITS」のファッション部門で最年少ファイナリストを獲得した、八木華。そこから7年が経ったいま、新作〈ブライドシリーズ〉とともに次なるステージを迎えている。
処分されたウエディングドレスを解体・再構築する同シリーズは、「祝福」「晴れ着」をテーマに21年から取り組んできたもの。しかし昨年、あることをきっかけにウエディングドレスが象徴する「花嫁」「女性性」への興味が湧いたのだという。「祖母が体調不良となり、残りわずかな時間で共有できる作品を作ろうと思ったんです」。着想源は、祖母と母の強い絆。女性用スーツのテーラーをしていた祖母の影響でさまざまな働く女性を見て育った母のルーツに想像が膨らんだ。「きっとシスターフッドを感じる環境にいたのだろうとイメージできるほどに、今でも祖母と母は強い絆で結ばれています。ふたりの人生を振り返る中で、母のあり得たかもしれない別の人生について思いをめぐらせました。身近なふたりからウエディングドレスを纏う存在について改めて考え直しました」
そうして明確にしたコンセプトは、言語の壁を超えて著名な海外女性フォトグラファーの心に響き、すぐに共同制作の作品〈Sanguine Bride〉を発表。「純白な女性が嫁ぎ先に染まる覚悟」を意味する日本の白色のウエディングドレスからインスピレーションを得た。「役割を終えたドレスを血紅色で染めることで、女性たちを生き返らせ、家父長制的な価値観に問いかけたかったんです」。エネルギッシュなヴィジュアルはSNSに投稿後、瞬く間に注目を集め、海外シンガーソングライターへ衣装提供からインナーウェアブランド「HEAP」とのコラボレーションまで活動の幅がさらに広がった。



