ポーランドがベラルーシとの国境を閉鎖する決定を下したことで、中国と欧州を結ぶ鉄道貨物輸送の約9割が停止した。再開のめどは立っていない。
この措置は、核攻撃の模擬演習も含まれたロシアとベラルーシの合同軍事演習「ザパト2025」への対応として、11日に導入されたもの。中東欧行きのほぼすべての列車は通常、ポーランド東部マワシェビチェとベラルーシ西部ブレストの分岐点を通過する。ここは、ベラルーシと欧州連合(EU)間の主要な軌間変換点となっている。
貿易回廊への圧力
鉄道回廊は中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の中で重要な役割を担っており、混雑した海上ルートの代替手段として、近年重要性が増している。米ニュースサイト「ポリティコ」が報じたところによると、2024年の貨物取扱量は前年比10.6%増加し、輸送額は同85%急増し250億ユーロ(約4兆円)を超えた。これはEUと中国の貿易総額の約4%に当たり、ポーランドは7億4000万ズロチ(約300億円)の関税収入を得た。
ポーランド当局は、ベラルーシとの国境閉鎖は新たな「安全保障の論理」を反映していると説明した。当局がこれまで道路輸送に限定していた規制を鉄道輸送に拡大したのは今回が初めて。ポーランドのマルチン・キェルビニスキ内務相は「ポーランド国民の安全が保証され、挑発行為の脅威がない」場合にのみ国境を再開するとした。
国際的な供給網の混乱
国境の閉鎖によって世界のサプライチェーン(供給網)が混乱し、陸路の速さに依存するテムやシーインといった中国の主要な電子商取引にも影響が及んでいる。中国は気候変動に伴う氷の融解によって開かれた、アジアと欧州の港を結ぶ新たな北極海航路の利用を検討し始めているが、この新航路が近い将来、既存の輸送ルートに取って代わる可能性は低い。
PKPカーゴをはじめとするポーランドの鉄道事業者は、国境での混乱が長期化すれば、海上輸送を経由する高額な迂回(うかい)ルートや、カザフスタン、カスピ海、黒海、トルコを経由する南方の陸上回廊の利用を余儀なくされる可能性があると警告した。ポーランド政府は地元企業への補償を約束しているが、国境がいつ再開されるか不透明なことから、具体的な金額を明らかにしていない。
外交上の対応
ベラルーシとの国境閉鎖について、EUの執行機関である欧州委員会は貿易への悪影響を認めながらもポーランド政府の立場を支持し、ロシアの「違法かつ不当な戦争」に対する正当な対応だとの見解を示した。
一方、中国政府はポーランドに対し国境の再開を促したが、直接的な批判には踏み込まなかった。中国の王毅外相は15日、ポーランドの首都ワルシャワで同国のラドスワフ・シコルスキ外相と会談し、二国間貿易の「持続可能な発展」への取り組みを再確認した。だが、中国側の発表では国境閉鎖に関する言及はなかった。



