アラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビに建設予定のディズニーランドは、同国の経済に強力な魔法をかけることが期待されている。それに加え、中東に建設されなければディズニーランドを訪れることがなかったであろう人々にも、ディズニーの魔法を届けることができるようになる。
アブダビが経済の多様化を図るため、数々のテーマパークを建設していることは周知の事実だ。同市は石油によって富を築いたが、資源が枯渇し始めた今、観光収入をもたらす世界的に人気のあるテーマパークを次々と誘致している。
アブダビと隣接するドバイは、世界有数の裕福な人々のための「遊び場」と見なされているが、住民の大多数は億万長者とは程遠い生活を送っている。これには正当な理由がある。
娯楽産業を発展させて国家経済の多様化を図るには、魔法のつえを振るうだけでは不十分だ。経済の多様化を実現するため、UAEを構成するアブダビやドバイとはじめとする5つの首長国は広大な施設を建設し、数十万人を雇用してきた。こうした施設で働く人たちは主に近隣諸国からの出稼ぎ労働者で、自国ではUAEほどの収入を得られない場合が多い。
ドバイに拠点を置くデジタルマーケティング企業グローバル・メディア・インサイトによると、UAEに住む1140万人のうち、実に88.5%を外国人労働者が占めている。米国からの駐在員が多いことは、UAEに進出した多種多様な米系の店舗やレストランの数が多いことからも明らかだ。とはいえ、UAE在住の米国人駐在員数は、インドやパキスタン出身の590万人に比べるとはるかに少ない。インドとパキスタンの出身者は合わせてUAEの総人口の半分以上を占め、その多くは国内各地に点在する壮大な高層建築物の建設を担っている。
米カリフォルニア州に拠点を置く経済研究所(ERI)によると、米国の平均年収が6万6991ドル(約990万円)であるのに対し、UAEでは17万9949ディルハム(約725万円)に過ぎない。これは、UAEで生活するのに億万長者である必要がないことを示している。
UAEは地理的に、世界人口の約3分の1が同国から4時間以内の飛行圏内に位置しているため、顧客基盤が広範だ。同国には世界最大規模のハブ空港もあり、年間約1億2000万人がアブダビやドバイを経由して移動している。労働者や観光客を受け入れるため、同国は世界屈指の寛容なビザ(査証)制度を採用している。



