英紙フィナンシャル・タイムズによると、ロシア国内深くへのウクライナのドローン攻撃が急増したため、クレムリンは広い範囲でのインターネット遮断を強いられ、企業や公共サービス、大勢の市民の日常生活に混乱が生じている。西部ウラジーミル市の住民のひとりは同紙に、ポジティブな面として「友人と会うときに、スマホをいじるのでなく会話をよくするようになりました」と話している。
通信遮断は主に軍事拠点や産業集積地の一帯で行われており、6月以降その発生件数は3倍に増えている。ロシアの非営利団体であるインターネット保護協会の推計では、全土規模のインターネット遮断による損失額は1時間あたり464億ルーブル(約820億円)、うちモスクワだけで96億ルーブル(約170億円)にのぼるという。こうしたなか、ロシア中央銀行は最近、国民の間で現金保有が急増していると警告したとも報じられている。インターネットの遮断が日常的に起こるために、国民はデジタル決済でなく手元の現金で支払わざるを得ない場合が増え、そのせいで銀行システムから流動性の流出が続いている。
モスクワとサンクトペテルブルクも安心できない
独立系メディアのノーバヤ・ガゼータ・ヨーロッパによると、2025年1月から5月の間に、ロシア国内の空港はウクライナのドローン攻撃が原因で計217回閉鎖された。この数は2023年と2024年の閉鎖数の合計よりも多い。搭乗予定だった数万人が影響を受け、航空会社側は10億ルーブル(約18億円)を超える損失を被ったとされる。なかでも大きな影響を受けているのが、モスクワ市内やその近郊の空港だ。
ロシアの航空業界は5月、ウクライナのドローン攻撃によって大混乱に陥った。モスクワ市内のブヌコボ空港と郊外のシェレメーチエボ空港では半数以上の便が乱れ、同じくモスクワ郊外のドモジェドボ空港でも43%の便が平均で5時間超遅延した。
7月にも、ウクライナによる大規模なドローン攻撃の影響でモスクワ一帯の空港で大量の欠航や遅延が発生し、数千人が足止めされた。ロシアメディアは、ロシアで最も利用者の多いシェレメーチエボ空港で、搭乗予定だった人たちがフロアで寝たり、ターミナルで長蛇の列をつくったりする様子を映像で伝えている。
こうした混乱は偶然ではない。ウクライナは、最も大きな混乱が起こるようなタイミングを見計らってドローンの群れを飛来させている。ドイツにあるカーネギー国際平和財団ロシア・ユーラシアセンターのセルゲイ・バクレンコ上級研究員は、ドローン攻撃によって空の便や鉄道が乱れるために車を利用する人が増え、その結果、ガソリンの需要も押し上げられていると指摘している。こうした動きはとくに、モスクワと黒海沿岸を結ぶルートで顕著だという。
ウクライナ国防省情報総局(HUR)の関係筋は2024年1月、地元メディアのウクラインシカ・プラウダに、HURのドローンがサンクトペテルブルクの石油貯蔵施設を攻撃したことを認めたうえで、「今後、サンクトペテルブルクとレニングラード州の軍事施設はウクライナ部隊の攻撃範囲に入る」と言明していた。


