北米

2025.09.22 09:00

閉店続く米百貨店メイシーズに転機──今年になって驚きの急展開

Jonathan Weiss / Shutterstock.com

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ハゲタカは死肉に群がるという──この10年あまり、低迷を続けるMacy's(メイシーズ)の上空にはまさに、ウォール街の投資家らがあたかも瀕死の動物を狙うハゲタカのように舞っていた。米百貨店コングロマリットであるメイシーズは近年、売上げをじわじわと減らし、最盛期に850店あった店舗のほぼ半分を閉めるまでに至っていた。しかし直近の四半期決算で久方ぶりに売上げが増加。これが投資家を驚かせ、買い注文が殺到したことで、株価はわずか2日間で25%以上も急騰した。

これまでのところ株価の上昇は維持されており、メイシーズが打ち出した再建戦略「Bold New Chapter(大胆な新チャプター)」が、ようやく実を結び始めたと思われる。このままいけば、メイシーズは競売の憂き目を免れるかもしれない。

長年にわたりアクティビスト(いわゆるハゲタカ投資家)が関心を寄せてきたのは、最新のファッションでも感謝祭の名物パレードでも、あるいは低迷する百貨店事業そのものでもなかった。彼らが「おいしい獲物」と見てきたのは、多くの店舗の下にある不動産資産だった。

同社の価値は──メイシーズが保有する不動産資産の評価額には大きな幅があるものの──理論上は、たとえ明日倒産したとしても、現在の時価総額およそ50億ドル(約7323億円)を上回ると見られている。そして今年の第2四半期決算で、何年も聞かれなかった売上げ増加のニュースがきっかけとなり、投資家心理が好転。株価を押し上げた。

気短な投資家らはもう何年間も執拗に、高価値の資産を売却して現金化するようメイシーズに迫っていた。不動産の活用に加え、業績が好調な高級百貨店Bloomingdale’s(ブルーミングデールズ)や美容品小売チェーンBluemercury(ブルーマーキュリー)のスピンオフ(事業の切り離し)を検討するよう同社に圧力をかけてきたのだ。

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翻訳=猪股るー

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