アップルが「外部音取り込み」を強化した理由
AirPods Pro 3ではさらに性能の高いマイクを載せて、外部音取り込みモード時にも装着するユーザーの耳の形状、装着状態に合わせて音の聞こえ方を最適化するアルゴリズム解析の精度を高めた。外部音取り込みをオンにするとAirPods Pro 2はすべての音がクリアに聞こえるが、AirPods Pro 3は聞こえる音の立体的な位置関係まで把握できる。
特にイヤホンを装着するユーザーの「自分の声」が明瞭度を増している。米Appleでオーディオ製品の開発を率いるVP of Hardware EngineeringのMatthew Costello氏は、筆者のインタビューに答えて「ユーザーの声を正確に再現することは本当に困難だった。私たちは通常、音を聴く時に自身の顔や上半身に反射して耳に入ってくる音を聴いている。AirPods Pro 3ではユーザーの身体の影響を考慮しながら、より自然な外部音取り込みモードを実現したいと考えた。そのために10万時間以上のユーザ調査と1万以上の耳のスキャンデータを開発に活かし、アルゴリズムを練り上げた」と、開発の道のりを振り返った。
AirPods Pro 3にとって、外部音取り込みモードは音質とアクティブノイズキャンセリングと肩を並べる最重要機能のひとつだ。その理由は、今では本機が音楽を楽しむためのリスニング用デバイスとしての役割を超えて、様々な種類のボイスコミュニケーションにも活用されているからだ。
2024年10月には無料のソフトウェアアップデートにより、AirPods Pro 2に医療機器グレードのヒアリング補助機能が追加された。イヤホンを装着してヒアリング補助機能をオンにすると、周囲の環境音や対面して話す人の声がより明瞭に聞こえるようになる。
さらに今秋から「ライブ翻訳」機能が加わった。その日本語対応も年末までに予定する。環境音に注意を向けつつ、会話の音を正確に聴き取るためのワイヤレスイヤホンは、これからますます多くのユーザーに求められるようになるだろう。AirPods Pro 3がその進化を先導することは間違いない。
なお、筆者もAirPods Pro 3によるライブ翻訳を実機で試した。日本語対応がまだなので、英語のニュース番組の音声をパソコンのスピーカーで再生しながら、フランス語へのライブ翻訳のスピード感と精度を確かめたが、翻訳の精度は十分に高そうだ。


