アップルのように、コンテンツを送り出す側のデバイスであるスマートフォンと、受け取る側であるワイヤレスオーディオの両方を、それぞれに搭載するチップセットからまるごと設計・開発できるメーカーは少ない。ゆえに独自性のある機能が提案できるし、ソフトウェアアップデートにより日々改善を図りながらユーザーに快適な使い心地も提供できる。
AirPods Pro 3の「3つの大きな進化」
筆者も新しいAirPods Pro 3を体験した。主に3つの点が前世代のAirPods Pro 2よりも飛躍を遂げていると感じた。
ひとつは音質。AirPods Pro 3は小さな筐体内部の音響構造を見直したことで、サウンドの心臓部であるアップル独自開発のドライバー(スピーカー部分)が持つパフォーマンスをさらに引き出した。音場(サウンドステージ)の見晴らしが良くなって、広々とした立体的な情景を描く。
ボーカルやアコースティック楽器の音色がとても生々しい。低音のリズムも一段と躍動感が増した。新旧AirPods Proを聴き比べる機会があれば、ぜひ普段からよく聴く楽曲を再生してみてほしい。音楽のディティールがより鮮明に感じられるはずだ。
2つめにANC機能の消音効果が高くなった。AirPods Pro 2も十分な消音効果が得られるワイヤレスイヤホンだが、最新世代のモデルはまるでさまざまな種類のノイズを狙い撃ちしながら消しているような精度の高さを感じる。そしてノイズキャンセリング機能を搭載するイヤホンにありがちな、耳の中が息苦しくなるようなプレッシャーがとても少ない。ANCをオンにしながら長時間リスニングが快適に楽しめる。バッテリーの持ちも最大6時間から2時間伸びて、最大8時間になった。
例えば屋外を歩きながら移動している時に、自分の足音が聞こえなくなるほどに消音効果は強力だ。電車やバス、飛行機に乗って移動している時にはANCはオンのままで良いが、歩行時には「外部音取り込みモード」に必ず切り替えて使いたい。そして、筆者が3つめにAirPods Pro 3の進化を感じた点が、この外部音取り込みモードの完成度に磨きがかかったことだ。
AirPods Proのように、シリコン製のイヤーチップで“耳栓”をするタイプのイヤホンは、装着した時に如何ともしがたく環境音が聞こえにくくなる。ところがAirPods Proは初代のモデルから搭載する外部音取り込みの機能がとても優秀なので、モードを切り替えるとまるでイヤホンを耳から外したみたいに、周囲の環境音がとてもクリアに聞こえてくる。


