中国の深センを拠点とするOrbbec(オーベック)の株価がこの1年で315%以上上昇した。これにより創業者ハワード・フアンの資産が急増し、ビリオネアの仲間入りを果たした。米国では生成AIを軸としたスタートアップが急成長を遂げている一方、中国では政府主導のロボティクス・AI強化策を背景に、ヒューマノイド(人型ロボット)分野への資金流入が加速している。フアンの成功は単なる個人の富豪入りにとどまらず、中国の産業政策と投資熱が結びつく典型例であり、米中間で進む「AI・ロボット覇権競争」の一断面を映し出している。
創業2013年のOrbbec、3Dビジョンカメラで技術基盤を確立
光学測定を専門とするエンジニアだったフアンは2013年、研究成果を社会で役立つ形にしようとOrbbecを立ち上げた。中国のハードウェア製造の拠点である深センから始まった同社は、機械が人間の目と同様に奥行きを認識し、周囲の環境を正確に把握できるようにする3Dビジョンカメラを開発してきた。
Orbbec株が315%以上も急騰、時価総額7640億円に到達
現在、Orbbecのテクノロジーは、中国で盛り上がるヒューマノイド分野の成長を支えている。同社の3Dビジョンカメラは、中国政府の支援を受ける「北京人形機器人創新中心(X-Humanoid)」が開発した「天工ウルトラ」といったロボットに不可欠な部品となっている。このロボットは今年4月、北京で開催された「世界初のヒューマノイド・ハーフマラソン」で約20体の競合ロボットを破り優勝した。Orbbecは上海証券取引所に上場しており、株価は中国のロボット熱を追い風にこの1年で315%以上急騰し、時価総額は52億ドル(約7640億円、1ドル=147円換算)に達した。
創業者の資産は約2058億円、ビリオネアの仲間入り
Orbbecの会長兼CEOを務める45歳のフアンは、同社の27%を保有する筆頭株主だ。フォーブスは、その持ち株に基づき、彼の資産を14億ドル(約2060億円)と推定している。
顔認証と医療認証が収益を牽引、上期は黒字転換で売上約87億円
ヒューマノイドはまだ主流となっていないため、Orbbecの現在の主な収益源は、非接触型決済や医療保険の認証に使われる顔認証システム向けの3Dビジョンカメラだ。2025年上半期、同社は3000万元(約6億円。1元=20円換算)の純利益を計上し、前年同期の8100万元(約16億円)の赤字から黒字に転じた。同期間の売上高は2倍以上に拡大し4億3600万元(約87億円)に達し、売上の62%を小売や医療分野で使われる顔認証システム向けモジュールが占めていた。



