テクノロジー

2025.09.21 13:00

「成長」の代価は人間関係の「摩擦」 テクノロジーが消しゆく不快さ・葛藤・緊張

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摩擦は成長の代価だ

当たり前のことを忘れている。摩擦は不具合ではなく、本来の機能そのものだ。私たちは転びながら歩き方を覚える。筋肉は重さに抗うことで成長する。アイデアは格闘を通じて結晶化する。

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摩擦のない世界の最も危険な帰結は、技術そのものではなく、それが私たちに信じさせる内容である。

・何かが馴染みなければ、それは危険に違いない
・誰かが異議を唱えれば、その人は脅威に違いない

私たちの道具は不快さに耐える必要を取り除くので、それに対処する能力を鍛えなくなる。やがて、異議と害との違いすら見分けられなくなる。

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人間の強み

私たちは「スムーズ」のために作られてはいない。摩擦や痛みを耐え抜き、より完全な姿となれるように作られている。そこに創造性が息づき、親密さが築かれ、リーダーが鍛えられる。摩擦は、アーティストの苦闘であり、メンターの課題であり、共同創業者の意見の相違だ。それは、自分が意義あること、格闘に値することに取り組んでいるというシグナルだ。摩擦のないシステムは楽に感じられるが、長期的には成果と効率を低下させる。不快な対話を恐れることは、不誠実な文化を生み、イノベーションを不可能にする。

摩擦を取り除けば、失うのは不快さだけではない。勇気、しなやかさ、そして互いの存在を失うことになる。私たちは、このまま使いやすさを最適化する道具を作り続け、人々が対立や複雑さに対処できないことに驚いてみせることもできるが、より難しく、はるかに価値のあることを選ぶこともできる。すなわち、緊張に向き合う力を再構築し、不快さを不可欠の条件として取り戻すのだ。そして最も人間的な行為とは「熱」を避けることではなく、物事が厳しくなったときにもその場にとどまり、それでもなお対話することだというなのことを思い出そう。

forbes.com 原文

翻訳=酒匂寛

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