映画「国宝」から伝統の強さまで 文化における「真の革新」とは:中村壱太郎×細尾真孝

細尾真孝|細尾代表取締役社長(写真左)・中村壱太郎|歌舞伎俳優(同右)

──革新が市場に理解されるかどうかは別です。伝統の新しい姿をビジネスとして成り立たせるには何が必要ですか。

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細尾:経済効率性を無視して美しいものを追求する工芸や、歌舞伎のルーツである歌や踊りは、きっと100年後も残っていることでしょう。マイノリティになった価値観をどうメインストリームに乗せられるかが、工芸の世界の未来をつくると思っています。伝統工芸や芸能は、これからの日本が世界で戦える重要なIP。大事なのは切り離されてしまった文化と経済をどう取り戻せるかだと思うんです。例えばLVMHグループは完全に文化を経済に換えていますよね。そして今世界のラグジュアリーブランドは、クラフトマンシップを軸に置いている。つまり、工芸がラグジュアリーの中心地に来ているんです。そういう意味で、ダイヤモンドの原石は日本にたくさんあります。足りないのは、勇気をもって飛び込む人じゃないでしょうか。

伝統文化の領域は、文化とビジネスをプロデュースするカルチャープレナーの挑戦がまだ少ない。自分ももっと挑戦を続けなければいけないですね。

壱太郎:歌舞伎が世界に出ていくためには、役者にファンがつくという構造を超えて、「作品そのもの」の魅力がもっと伝わるような仕掛けを考えていく必要があると思うんです。『レ・ミゼラブル』や『トゥーランドット』のように、役者は誰であろうと見に行きたいと思わせるような作品があるといい。そう考えると、これからは歌舞伎役者一人ひとりが小さなプロデューサーとしてショービジネスをつくる意識が大事になってくるのではないでしょうか。その新しい挑戦単体では大きな収益を生まなくても、挑戦がさらなる挑戦を呼び興行として成り立つことがわかれば、大きな投資も増えるはず。プロデューサーの意識をもつことで歌舞伎界全体の経済が回るのです。

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そう見得を切ったからには、私自身がまずART歌舞伎を興行として成功させないといけない。ぜひ期待してください。

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文=村上 敬 写真=ヤン・ブース スタイリング=井藤成一(中村) ヘアメイク=YASUHIRO MIKAMI

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