米連邦準備制度理事会(FRB)は米国時間9月17日、数カ月ぶりの利下げを実施した。これにより、住宅ローン金利や国債利回りの低下、さらに今後数週間にわたる暗号資産の上昇が予想されている。
FRBは今週、12月以降4.25%から4.5%のレンジに据え置かれていた政策金利を、4%から4.25%のレンジへと引き下げることを決定した。
住宅ローン金利への影響:借り換えのチャンス到来か
住宅ローン金利は利下げの前後で低下する傾向がある。連邦住宅金融抵当公庫(フレディマック)によると、30年固定金利住宅ローンの平均金利は先週、6.5%から6.35%に低下し、2024年10月以来の低水準となった。15年固定金利ローンの借入コストも5.6%から5.5%に下がり、前年の5.27%に近づいた。パンデミック期にFRBが政策金利を0%から0.25%のレンジまで引き下げた際、30年ローン金利は2020年末までに2.7%から3%のレンジで推移し、過去最低を記録した。消費者金融保護局のデータによれば、2020年に住宅ローンを借り換えた人々は、金利低下により合計で年間約53億ドル(約7800億円。1ドル=148円換算)を節約したという。逆に、2022年と2023年の利上げ局面では住宅ローン金利は7%前後まで上昇した。これまでの傾向を見ると、FRBの利下げや利上げに対し住宅ローン金利はその後数週間で反応するのが分かる。
米国債への影響:利回り低下と借入コストの減少
長期国債の利回りは金利の影響をより直接的に受ける。金利が下がれば利回りも低下する傾向にある。パンデミック時にFRBが金利をゼロ近くまで引き下げた際、10年国債利回りは過去最低の0.5%に落ち込んだ。国債利回りが低下すれば、消費者の借入コストも減少し、クレジットカード、企業融資、自動車ローンなど幅広い借入の金利が下がる可能性が高まる。
暗号資産市場への影響:リスク資産への資金流入は期待できるか
暗号資産も、利下げによって恩恵を受ける可能性がある。米国の投資家は債券や預金口座の利回りが低下すると、よりリスクの高い資産を好む傾向があるからだ。パンデミック時には金利低下を背景にビットコイン価格が急騰し、2020年3月の約5000ドル(約74万円)から2021年11月には約6万9000ドル(約1021万円)まで上昇した。一方、2018年にFRBが利上げを行った際には、ビットコインの価格は約2万ドル(約296万円)から約3000ドル(約44万円)まで下落した。ただし、今回の利下げで暗号資産がさらに上昇するかどうかは不透明である。ビットコインやイーサリアムなど主要暗号資産は、最近数カ月で記録的な高値をつけており、すでに業界全体がトランプ政権下で規制緩和の恩恵を受けているためである。
トランプ大統領による政治的圧力と経済指標
今回の金融緩和は、ドナルド・トランプ大統領による数カ月にわたる圧力を受けた結果でもある。トランプはパウエルFRB議長を「遅すぎる」と批判し、大幅な利下げを求めてきた。労働市場が想定以上のペースで弱まっていることや、8月のインフレ率が再び上昇し、FRBの目標である2%を上回っていることを受け、ウォール街は利下げを予想していた。FRBは雇用の最大化と物価の安定という二重の使命を持つが、パウエルは先月、「米国経済におけるリスクバランスの変化」が「政策スタンスの調整を正当化する可能性がある」と示唆していた。



