実力を磨くためには、立場に固執しない
現在はさまざまな作品に参加しつつ、新しく立ち上げた育成プロジェクトの選考を行っている。ゆくゆくはそのチームで、まだ誰も見たことがない「線」や「色」、「影」の表現を追求してみたいと考えている。アニメーター育成を牽引するけろりらだが、指導役や肩書に固執するつもりはない。
「どんな業界でもそうだと思うんですけど、権力のある偉い人たちってちゃんと実力があるんですよね。いろんな考え方を持っていて、ちゃんと能力もあって。ところが、立場に固執するようになってしまったりして、どんどん歪んできてしまう。だから、なるべく長い期間、同じ役職に就いていたくなくて、教育係もいつか別の人に渡していけたらと思っています」
20代半ばからさまざまな立場の人の声に耳を傾け、調整を行いつつ作品のクオリティーをあげることに苦心してきた。辞めたいと思った時期もあった。そんなけろりらが今、大切にしているのはこんな時間だ。
「最近、CloverWorksの自分がいるチームは、会社の上映室でみんなで作品を観るんです。いいものが出来て、『よかったね』って言い合うのも楽しいですし、『ここはこうすればよかった』って反省するのも面白いし、他の人の仕事を見るのもめちゃくちゃ面白い。すごい人がいっぱいいるので、常に刺激があって、自分も頑張ろうと思えるんです。アニメって、人と一緒に物を作る面白さを感じやすい業界なんじゃないですかね」
自分たちなら、新しいモノをイチから創れる
手掛ける作品は海外での評価も高い。世界を変え得る20代は、作品作りにおいてもグローバルを意識しているのだろうか。
「マーケティングとか海外展開で意識すべきこともあると思いますけど、アニメーターが変に意識しすぎて作品の魅力を損なってしまうのも違うのかなと思います。とはいえ、アニメの仕事は人に観てもらわないと成立しないもの。作るからには多くの人に観てもらいたいですが、これまでと同じものが作りたい訳じゃない。多くの人に受け入れられる新しい表現って絶対にまだあると思うんです。そして、自分たちならそれをイチから創れる。『これだけ言っておいて、できてないじゃん』って言われないように頑張っていきたいですね」


