最後の1枚
フランス軍部隊に所属する1人のアマチュア写真家が、アトラス山脈の霧に包まれた斜面を進む1頭のライオンを見つけた。彼は、偵察任務の合間の短い休憩中に、その姿を写真に収めた──その写真がやがて、欧州自然史アーカイブに収蔵されることになるとも知らずに。
この1枚の重要性を引き立てているのは、撮影された時の状況だ。撮影者は、野生が見せた一瞬の美しい光景を収めようとシャッターを切ったが、それが、野生のバーバリライオンの最後の写真記録となった。それからまもなくして、バーバリライオンは絶滅が宣言された。
遺伝子プールは残っているのか?
バーバリライオンの遺伝子プールは、飼育されている個体に現在も残っている可能性がある。野生のバーバリライオンが完全に姿を消したのを受け、欧州と北アフリカ各地の動物園は「バーバリライオン」を飼育していると主張した。とはいえ、それらの個体が純血種なのか、他の亜種との混血種なのかは定かではなかった。
モロッコ王室が飼育していたライオンには、何世紀も前に、イスラム系王国のスルタンから贈られたバーバリライオンの子孫と考えられる個体もいた。1990年代に入ると、遺伝子検査によってその真偽が明らかになり始めた。残念なことに、それらの個体の多くは、バーバリライオン由来の遺伝子マーカーを部分的にしか保有していなかった。飼育下で交雑が進み、混血種となっていたのだ。
現存するバーバリライオン(そう呼べるかどうかは不明だが)は今、動物園や保護施設で飼育されており、熱心な繁殖プログラムが行われている。なかでも、モロッコのラバト動物園と、エチオピアのアジスアベバにある施設が力を入れている。
最優先すべきは、バーバリライオン特有の遺伝子の保護と保存だ。バーバリライオンという亜種を本当に復元できるかどうかは不確かであり、保護活動に取り組む人々にとっては依然として大きな課題となっている。
絶滅種を象徴する存在
最後の姿が撮影されてから100年が過ぎた今、バーバリライオンの物語は何を意味するのだろうか。生物学者にとっては、人類がいとも簡単に種を絶滅に追いやれることを示す痛ましい事例だ。たとえ尊ばれ、神話になるほどの種であっても、例外ではない。
人類は、バーバリライオンに対して畏怖の念を抱いていたが、責任ある行動へと駆り立てるほどではなかった。芸術や紋章、文学でその存在を称えていたにもかかわらず、バーバリライオンの住む森やその獲物、野生における居場所を守ることに失敗した。
動物保護の分野ではしばしば、警鐘を鳴らす存在としてバーバリライオンが引き合いに出される。歴史的に有名な存在であっても、必ず生き残れるわけではないことを思い出させるからだ。認知だけでは不十分であり、積極的に保護活動を行わなければ、最強の種であっても姿を消してしまう可能性があるのだ。


