イスラエルの情報機関出身のタル・コレンダーは、人工知能(AI)を用いたセキュリティ関連のスタートアップをほぼ口コミだけで成長させ、アマゾンやコカ・コーラを顧客に抱える評価額3億ドル(約440億円。1ドル=147円)の企業へと育て上げた。
悪用されかねない設定ミスを40人の精鋭で洗い出す
コレンダーは、無駄を削ぎ落とした経営スタイルを好む。10代でハッキングの世界に足を踏み入れ、イスラエルの情報機関でサイバー防衛に従事した経歴を持つ彼女はいま、40人の精鋭チームを率いている。彼らは、ITセキュリティの中でも目立たないが不可欠な仕事──ネットワーク上の端末を調べ、過剰なアクセス権限や古いソフトウェアなど、悪用されかねない設定ミスを見つけ出すこと──に取り組んでいる。
かつて「Gytpol」として知られた同社は、現在「Remedio(レメディオ)」に改称し、ハッカーの視点で侵入に利用可能な設定ミスを検知するAIモデルを開発した。このモデルは企業のIT部門にアラートを発し、管理者がワンクリックで修正できる仕組みを整えている。「企業は、社内のすべての端末に当社の軽量エージェントを導入することで、挙動を細かく把握し、業務を止めることなく安全性を高められる」とコレンダーはフォーブスに語った。
自己資金のみで6年の経営、初回調達は96億円
36歳のコレンダーは、6年間にわたり自己資金のみで会社を運営し、その多くの期間で黒字を確保したと述べている。だが拡大路線に舵を切ったRemedioは先日、ベッセマーベンチャー・パートナーズが主導し、TLV PartnersとPicture Capitalが参加した初の資金調達ラウンドで6500万ドル(約96億円)を調達した。関係者によれば、同社の評価額は3億ドル(約440億円)とされる。
Remedioは今後、AIをさらに活用して別のセキュリティ業務も自動化する計画を立てているが、コレンダーはあくまでスリムな経営を維持したいと考えている。「黒字を守るには、とにかく無駄を削り、1ドルでも節約することだ」と彼女は語った。
リード投資家を務めたベッセマー・ベンチャー・パートナーズのアダム・フィッシャーは「サイバー分野ではVCの資金を調達するのが非常に容易なため、自己資金でここまで成功した企業はほとんど見たことがない」と述べた。同社への投資を決めた最大の理由について彼は、「際立った財務実績と効率の良さだった」と説明した。



