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2025.09.19 08:30

世界の中央銀行、「準備資産の40%を金」で保有していることが判明

Shutterstock.com

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慎重な投資家の多くは、ポートフォリオの40%を単一資産で占めることを賢明とは考えないだろう。しかし、それが世界の中央銀行が金の保有で到達した水準である。

この40%という数字は、大手投資銀行シティによる中央銀行準備の最新分析で発表されたものだ。わずか3年前には、各国の中央銀行が保有する金は準備の20%程度にとどまっていた。

金価格が直近で1オンス3685ドルまで急上昇したこと、さらに新興国の中央銀行による過去最高ペースの金購入が加わったことが、準備に占める金の割合を過去30年で最高に押し上げた主因である。

もっともシティは、このゴールドラッシュが続くとはみていない。今後6カ月から12カ月で金価格は1オンス3000ドルへ下落し、来年の今頃には2700ドルまで下がると予想している。

こうした今後の価格見通しは、米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)が今週、政策金利を引き下げるかどうかを検討する際に試されることになる(日本版注:原文公開後、FRBは0.25ポイントの利下げを決定した)。

低金利は、金への投資を後押しする傾向がある。また経済的不確実性や政治的不安定も同様であり、これら2つの要因はシティの慎重な見方を打ち消す可能性がある。

さらに金価格を高止まりさせ、あるいは一段と押し上げる要因として、新しい金投資の仕組みが発展していることも挙げられる。金は比較的希少な商品だからである。

デジタル・ゴールド

業界団体であるワールド・ゴールド・カウンシルが推進する「デジタル・ゴールド」という構想は、投資対象としての金を進化させる可能性がある。また暗号資産の推進派は、金をステーブルコインの裏付け資産として活用する構想を検討している。

いずれの場合も、金に裏付けされたデジタル商品を提供・取引するためには、まず金を購入し、保管する必要がある。これは実質的に、新しい形の需要を生み出すことになる。

シティは最新の『Commodity Market Outlook』の中で、金投資需要が今年に入り増加していると指摘した。その背景には米ドル安があり、その主因はトランプ大統領が予想以上に高い関税を課したこと、さらにFRBの独立性に対する中期的な懸念の高まりである。

シティの試算によれば、現在金は先物価格ベースで1オンス4200ドルで取引されており、鉱山会社は1オンスあたり2200ドルという過去50年で最高水準の利益を得ている。

この高収益率を受け、今週コロラドスプリングスで開かれた鉱業界のカンファレンスに登壇した基調講演者は、次のゴールドラッシュの舞台は金鉱株になると予測した。

リヒテンシュタインに拠点を置く金融機関、インクリメンタムAGのロニー・ストフェルレは「金は大きく上昇してきたが、今後は金・銀の採掘企業がアウトパフォームする(目標の指標以上の値動きをする)局面に入る」と述べた。

ストフェルレの楽観論は、金が転換点に近づき、そこから安定した下落局面に入るとするシティの見方とは対照的である。

今週のFRBの金利決定会合は、金とその支持者にとって重要な試金石となる。

forbes.com原文

翻訳=江津拓哉

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