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2025.09.19 13:00

YouTubeで爆発的人気、「トランプ揶揄」のAI動画に中国やロシアが関与か

Photo by Andrew Harnik/Getty Images

中国の習近平国家主席が描かれる機会は少ない

一方、中国の習近平国家主席が描かれるのは稀だ。そのわずかな出演シーンは、トランプに靴磨きをさせる場面、トランプの自伝を読みながら大笑いする場面などに限られる。

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調査会社Zelfによると、2025年にYouTubeで最も視聴されたトランプ関連動画のうち8本が、こうしたアカウント群によるものだった。その中で、最大規模のアカウント「メイク・AI・グレート・アゲイン」は、4月に初めて注目を集めた。きっかけは、トランプが中国への強硬な関税を発表した際に、米政府高官が低賃金の「ブラック工場」で働く場面を収めた動画を投稿したことだ。

メディアがホワイトハウス報道官に質問し、注目を集める

この動画はもともと中国のSNSで人気だったもので、中国とロシアの国営メディアによって拡散されたものだ。しかも「メイク・AI・グレート・アゲイン」のアカウントは、「ホワイトハウスに公式に認知された」と豪語している。その証拠として挙げているのは、4月の記者会見でレヴィット報道官が前述の動画について質問を受けたことで、その映像へのリンクを掲載している。ホワイトハウスはフォーブスのコメント要請に応じなかった。

それ以来これらアカウントはYouTubeでの存在感を高め続け、インドのモディ首相、フランスのマクロン大統領、テスラのイーロン・マスクも揶揄の対象とした。6月に開設されたアカウント「Global Presidents」も6億6000万回以上の再生回数を記録しており、ロシアの支援を受ける西アフリカの軍人、イブラヒム・トラオレを取り上げた動画シリーズを制作している。トラオレは2022年にブルキナファソでクーデターを起こし、フランス軍を追放した後にロシアと中国寄りの姿勢を強めている。

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中国とロシアは、西アフリカでのプロパガンダ活動にも注力

米国の超党派シンクタンク「Alliance for Securing Democracy」において、メディアとデジタル偽情報を研究する上級研究員のブレット・シェーファーは、この動画の制作者が「単なる金銭目的ではなく地政学的な意図を持っている可能性がある」と指摘した。その根拠として、題材にトラオレを選んだ点や、習近平がほとんど登場しない点を挙げた。

トラオレはYouTubeの主要市場である西側諸国では知名度が高くないため、視聴数や「いいね」を稼ぐには不向きだ。しかし近年、中国とロシアは西アフリカでのプロパガンダ活動に巨額を投じてきた。

シェーファーはさらに、「Global Presidents」が、中国国営メディアで人気となった北京の軍事パレード、ベネズエラのマドゥロ大統領が中国製スマートフォンを称賛する動画を投稿していると指摘した。

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翻訳=上田裕資

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