──「罪悪感なしでお金を使う方法」に1章が充てられています(第4章)。
マジューリ:日本人よりお金を使う米国人のなかにも、散財しながら罪悪感を抱く人が多い。出費を悪とするような記事もあふれている。だからこそ、罪悪感なくお金を使う方法を提案した。
例えば、「2倍ルール」だ。ぜいたくな買い物をするときは、同額の投資か貯金をする。買い物と同じ額を、将来に備えた投資などに回すことで、ある種の満足感を抱きながら散財できる。
個別株投資に反対する論拠
──「個別株は買うな」という直言もしていますね(第12章)。
マジューリ:以前は、個別株反対の論拠を「パフォーマンス(運用成績や実績など)」に置いていた。
パフォーマンス論とは、大半の個人投資家は、特定の市場で個別銘柄を選ぶと、インデックスファンド「S&P500」などのベンチマーク(指標・標準)を上回るパフォーマンスを達成できないというものだ。10年単位で、市場平均以上のパフォーマンスを実現できる個人投資家は1割程度だ。
ひるがえって、自著では、個別株投資に反対する論拠を「存在論的主張」に変えた。個別株投資は「フィードバック・ループ(結果が表れるまでの時間)」が非常に長い、という主張だ。数年から10年かかる場合もある。
また、大幅に下落しても、最終的に一大成長株に転じる銘柄もある。シュートが決まるか決まらないかで、すぐに実力がわかるバスケットボールとは違う。株の銘柄選びの良し悪しを見極めるには、非常に長い時間が必要だ。
──巻末に「21の黄金ルール」が載っています。特に重要なものは?
マジューリ:ひとつ目は、ルール13「早く買ってゆっくり売る」という、タイミングに関するものだ。「株価の下落を待って買う」戦略は、「買い続ける」「すぐに買う」戦略よりパフォーマンスが劣ることはデータが証明済みだ。
ふたつ目は、ルール9「リタイアで大切なのはお金だけではない」というものだ。「仕事を辞めたら何をするのか」をリタイア前に明確にすべきだ。仕事中心だった人たちは、リタイア後、やることがなくなってしまう。
こうした問題は、お金とは関係がない。問題は、リタイアしたことで、人間としての存在が危機に陥ることだ。リタイア後、「自分の時間をどう使うか」「社会のなかで、自分自身をどう位置付けるか」が重要になってくる。アイデンティティは、人間の生き方において非常に重要なものだ。
──若い世代に向けてメッセージを。
マジューリ:貯金も投資も、将来、理想的なかたちで使うことがポイントだ。投資とは、「将来の消費」を増やすために「今日の消費」をあきらめることだ。お金の目的は、やりたいことをやることにある。要は、充実した人生を送ることだ。この点を忘れてはならない。
ニック・マジューリ◎Ritholtz Wealth ManagementのCOO兼データサイエンティスト。ウォール・ストリート・ジャーナルやCNBC、ロサンゼルス・タイムズなどに記事を寄稿。緻密なデータに基づくパーソナルファイナンス関連の人気ブログ「Of Dollars And Data」を執筆。著書『JUST KEEP BUYNG』が全米ベストセラーに。


