時間をかけて金融資産を買い続けることが、富を増やす最適な手段であるとデータが証明している──。ベストセラー『JUST KEEP BUYING』著者が、「金融孤児になりかねない」日本人へアドバイスを送る。
「ただひたすら『買い続けよ』」
日本の読者に、こう熱く語りかけるのは、ベストセラー『JUST KEEP BUYING:自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』(児島修・訳、ダイヤモンド社)の著者で、若手ウォールストリーターのニック・マジューリだ。
彼は、ニューヨークに本社を置く米投資顧問会社「リトホルツ・ウェルスマネジメント」の最高執行責任者(COO)で、データサイエンティストの顔も併せもつ。マジューリによると、貯金や現金を重視する日本の人々は投資に軸足を移すべきだという。なぜか。
積極的な投資アプローチを唱えるマジューリに話を聞いた。
──執筆動機を教えてください。
ニック・マジューリ(以下、マジューリ):コロナ禍が生みの親だ。ブログ「Of Dollars And Data」を運営しているが、外出できなかったときに書きためた記事のなかからベストなものを選び、一冊の本にした。
「時間をかけて買う」という考え方はすでにあったものだが、それをさらに積極的な投資アプローチへと発展させた。長年、金融資産を食料品のごとく「買い続ける」ことで、雪玉が坂を転がって大きくなるように資産が増えていく、というのが持論だ。データも豊富にある。
時間をかけて買い続ければ、富が増え、お金の実質的な価値(購買力)を維持、または増加させることができる。日本では最近まで、インフレの心配がなかった。むしろデフレで、貯金していれば、現金の価値が上がった。株式市場も低調だった。つまり、「現金重視」の文化でも、支障がなかった。だが、インフレで状況は変わった。今後は、株式や債券、不動産など、収益を生み出す資産の購入が重視されるだろう。
──「このままでは、日本人は『金銭的自立』に遅れた世界の金融孤児になりかねない」と書いていますね。ただ、日本でも、新NISA(少額投資非課税制度)で投資を始める人が増えています。
マジューリ:日本の貯蓄率は米国よりはるかに高いため、投資にお金を回せる。これは、いいことだ。重要なのは分散投資だ。全資金を日本株に投資することは勧めない。多様な収益を生み出す資産を買い続け、長く保有する。
米国株は、まずまずのリターンを生み出してきたが、関税問題などを考えると、今後も高リターンが続くとは限らない。日米や欧州など、グローバルな株式を保有していれば、今後30年間はプラスの実質リターンが期待できる。
──投資だけでなく、貯金にも多くのページが割かれています。
マジューリ:さほどお金がない若いころは、投資の重要度は低い。まずは収入を増やし、お金をためることが重要だ。大半の人々にとって、また、ライフサイクルの大半において、貯金は資産形成のための主要な手段だ。
というのも、投資には、お金が必要だからだ。重要度で、どちらかひとつを選ぶとしたら、貯金だ。まず、収入の一部を貯金しないことには始まらない。
だが、年齢とともに資産が増えていくと、投資収益が収入より大きくなる。自分にとって、人生のどの段階で、収入と貯金、投資のいずれにフォーカスすべきなのかを考えることが重要だ。



