欧州

2025.09.18 11:00

ウクライナの製油所攻撃がロシアを圧迫 燃料不足や値上がりに国民不満、「軍資金」にも打撃

ロシア北西部レニングラード州にあるキリシ製油所がウクライナのドローン(無人機)攻撃を受け、炎上した様子とされる画像(2025年9月14日にXで共有された動画から)

ウクライナは6月、「クモの巣作戦」で攻撃範囲の広がりをあらためて示してみせた。この作戦では、ロシア国内深くに侵入させた貨物コンテナから安価なドローンの群れが飛び立ち、多数の戦略爆撃機を破壊した。

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2025年を通じて、ウクライナによる長距離ドローン攻撃はロシアのエネルギーインフラに打撃を与えているほか、ロシアの軍産複合体を支える工場もターゲットにしている。元国防省顧問のクザンは「兵站は燃料に大きく依存し、近くのインフラが破壊されると深刻な不足に直面します」と説明する。

制裁が十分な効果を発揮してこなかったところで、ウクライナのドローンが効果を上げる格好にもなっている。クザンはこう語る。「製油所に対するウクライナのドローン攻撃は、制裁だけでは達成できなかったことを成し遂げています。モスクワは西側の制裁に適応する方策を見いだしてきましたが、これまでのところ、ウクライナのドローンに対しては頼りにできる防御策を講じられていません」

戦争による社会的圧力がロシア全土で高まっている

8月までに、ウクライナはロシアに対する攻撃を拡大していた。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が時間はウクライナでなくロシアに味方していると賭けるなか、ウクライナによる石油戦はクレムリンに対する圧力を強めている。オデーサ大のドゥボビクは「ロシアはこうした攻撃の結果に適応する方策を引き続き模索していますが、そうした対処には代償が伴い、克服しなければならない障害が増えています」と指摘する。

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ロシア南部サラトフ州では、燃料の供給が不足し、値段が毎週のように上がるなか、住民が不満を募らせている。当局は、混乱は一時的で局所的なものだと主張しているが、納得する人は少ない。国内各地での燃料危機はロシアの新聞で取り上げられることも多くなっている。

プーチンは9月4日、ウラジオストクで開かれていた国際会議「東方経済フォーラム」の席で、ロシアがガソリン不足に直面していることをしぶしぶ認め、「1000年近くは持つ」資源として石炭を頼りにするよう提案したと伝えられる。ロイターによると、ロシアの8月の石油輸出収入は5年ぶりの低水準となる135億ドル(約1兆9900億円)あまりに落ち込んだ。輸出が減少し、主力油種のウラル原油が1バレル56ドルと価格上限の60ドルを下回る水準で取引されたためだ。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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