ロシアにとって、このダメージは国内でも戦場でも深く及ぶものだ。石油・天然ガスからの収入は、兵器生産から新規入隊者の誘致に必要な高額報酬まで、クレムリンの軍資金になっている。裏を返せば、そうした収入に対するどのような妨害も、ウクライナの防衛を助けることになる。「ウクライナの主な目的は、ロシア軍への燃料補給を断ち切ることと、クレムリンの戦争努力を資金面で支える輸出収入を減らすことにあります」とクザンは筆者に語った。
ロシアでは燃料不足が広がるなか、各地のガソリンスタンドで長い行列ができているとの報告もある。現地紙イズベスチヤは、国内の10以上の地域で供給混乱が生じていると報じている。ただし原因は、ほかの場所で報告されているような「ドローンの残骸」ではなく、季節的な需要と観光客の増加だとしている。クレムリンは苦しい弁明を強いられている。ウクライナによるドローン攻撃を認めれば、現在の「軍事作戦」が計画どおりに進んでいないことを認めるに等しいからだ。
メチニコウ記念オデーサ国立大学国際研究センターのボロディミル・ドゥボビク所長は、筆者のインタビューでこう話した。「これらの攻撃のなかには、蚊に刺された程度のものに見える攻撃もあるかもしれませんが、さまざまな目標を狙って攻撃が頻繁に行われ、それが積み重なっていくことで、次第に痛みを感じさせるものになってきています」
制裁でできなかったことを達成しているウクライナの無人機攻撃
ドナルド・トランプ米大統領は今年2月にホワイトハウスの大統領執務室でゼレンスキーと衝突した際、ゼレンスキーに「あなたにはカードがない」と言い放った。だが、時間がたつにつれて、ウクライナには切れるカードが何枚もあることが明らかになった。ウクライナのドローンは2025年を通じて継続的にロシア各地に送り込まれ、モスクワエリアの空港も再三閉鎖に追い込んでいる。
ロシアにとって由々しい事態になったため、ウクライナメディアのRBCウクライナによると5月の戦勝記念日パレードに先だち、中国がウクライナ側にモスクワへの攻撃を控えるよう要請していたという。モスクワやサンクトペテルブルクに住むエリート層ですら、ウクライナのドローン攻撃による混乱の影響を免れていない。また、防空システムが不足しているロシアは、極東地域でおとり(デコイ)の使用を増やしていることも、衛星画像で判明している。
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— AS-22 (@AS_22im) May 8, 2025
GoogleEarth has been updated to show that additional S-300/400TEL decoys have been installed in the Far East region.
These decoys are used in the Far East region to conceal S-300/400 movements as much as possible.
Despite the changes, their role as decoys is still inadequate. https://t.co/yt3vw90O9G


