政治

2025.09.19 11:00

中国依存を強めるロシア シベリアの新規ガスパイプラインには「落とし穴」も

ロシアの首都モスクワで会談する同国のウラジーミル・プーチン大統領(右)と中国の習近平国家主席。2025年5月8日撮影(Contributor/Getty Images)

同パイプライン建設を巡る合意は、政治的にはロシアが西側諸国との関係再構築への望みを断念したことを示している。ロシア連邦議会上院の副議長であり、上院外交委員会の委員長を務めるコンスタンチン・コサチェフは、率直に「西側の方向性は見込みがないと認識されており、ロシア政府はもはや欧州の冷静さを取り戻すことを期待していない」と言明した。

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ロシアと西洋の関係は今から約300年前の1721年、帝政ロシアのピョートル大帝がスウェーデン帝国を破り、ニスタット条約を結ぶことで欧州への「窓を壊した」ことから始まった。しかし今、ロシアは西洋から距離を置こうとしているのかもしれない。

「シベリアの力2」建設計画は、財政的な理由で長らく遅延していた。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が最初に西シベリアから中国行きの天然ガスパイプラインの敷設を提案したのは、2006年にまでさかのぼる。だが、ガスプロムと中国政府は合意に至らず、交渉は2008年に行き詰まった。2014年にロシアがウクライナ南部クリミア半島を併合すると、同国は当初の予定の代わりに東シベリアを起点とする「シベリアの力1」を敷設し、2019年に中国への天然ガス供給を開始した。

ロシアは2022年以降、中国に対し、西側市場の崩壊に伴う苦境から自国経済を救うために迅速な行動を取るようたびたび促してきた。中国はこれに対し繰り返し異議を唱え、代わりにロシアから譲歩を引き出そうとしてきた。「シベリアの力2」建設に向けた中露の合意は、確かにプーチン大統領の当初の構想を復活させるものだが、今やそれは選択ではなく必要に迫られてのことだ。

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負担を負うのはロシア、利益を得るのは中国

アナリストらは「シベリアの力2」の建設費用を約250億ドル(約3兆6700億円)と見積もっている。プロジェクトが順調に進んでいることを示そうと、ガスプロムは既に410キロ区間の建設に着手している。この区間は2023年の入札で落札され、契約額は119億ルーブル(約211億円)に上る。

だが、中国が手がける多くの海外プロジェクトとは異なり、同国政府はロシア領内の区間の建設資金を負担しない。費用負担はガスプロムに降りかかるが、同社は最近、悲惨な財務状況に陥っている。ガスプロムにとどまらず、ロシアの消費者も経済的な打撃を受けることになるだろう。ロシア国内のガス価格は向こう3年間で50%以上値上げされる計画で、実質的に中国向け輸出を補助することになるからだ。

米コロンビア大学世界エネルギー政策センターのタチヤナ・ミトロワ博士は次のように指摘する。「ロシアにおける大規模な社会基盤整備と同様、請負業者や個人的利害関係のレベルで、キックバックや利潤追求が確実に行われている。しかし『シベリアの力2』の場合、プーチン大統領の主たる動機は地政学的な警告であり、エリート層の富の蓄積は二次的ではあるが、無視できない懸念事項でもある」

天然ガスの価格設定に関しては不透明だが、中国側に有利な方向に傾いている。「シベリアの力1」では、ガスプロムは欧州向け販売時と比べ、既に1立方メートル当たり45~50%の収益減を被っている。「シベリアの力2」については、中国がロシア国内の補助金付きガス価格に近い料金を強く求めたとの報道もある。プーチン大統領は、この取引が中国側に競争上の優位性をもたらすことを認めながらも、進展を前向きに捉えようとしている。

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翻訳・編集=安藤清香

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