中国・天津で今月初めに開催された上海協力機構(SCO)首脳会議での壮大な展示は、米国への対抗意識を燃やす中国の習近平国家主席が構築している、北京中心の政治グループの進化を誇示するためのものだった。
2001年に設立されたSCOはこれまで、宣言は盛んに行うが、中身が伴わないことが多かった。しかし今年は大きな変化の年となり、中国を筆頭とする加盟国は、経済競争こそが第二次世界大戦後の米国中心の体制に挑戦する主要な道だと宣言した。
習主席は米国が開発した「全地球測位システム(GPS)」に対抗するため、中国の衛星測位システム「北斗」をSCO加盟国に開放すると約束。さらに、ユーラシア地域の社会基盤整備資金を目的とした中国主導の構想であるSCO開発銀行の設立を発表した。この計画は中国によって長い間進められていたが、同国とともにSCOを主導するロシアが、ユーラシア地域は自国の裏庭であるという考えに固執し、計画を阻止していた。
ところが最近になってロシアは立場を転換し、中国側の提案を受け入れた。中露関係が一方通行になりつつある中、ロシア側が譲歩した格好だ。この背景には、中国がロシアを必要とする以上に、ロシアが中国を必要としているという事情がある。両者はこの点を認識しており、中国は自国に対するロシアの戦略的依存を強めようとしている。
ロシアがかつて推進していた武器供給と天然資源の取引は、2022年の同国によるウクライナ侵攻開始以降、中国によって意図的に遅延させられた。習主席はロシアを疲弊させることで、自国が交渉の場で有利な立場を確保できるようにしたのだ。
この力学は、中露関係のあらゆる場面で作用している。特に目立つのがエネルギー分野だ。ロシアはSCO首脳会議で、中国向けの天然ガスパイプライン「シベリアの力2」敷設計画の進展を強調した。だが、行間を読むと、このプロジェクトが中国側に有利に働くであろうことは明らかだ。
「シベリアの力2」に込められたロシアの戦略
SCO首脳会議で触れられた同プロジェクトは、ロシアの東方重視政策の真の代償を浮き彫りにした。首脳会議に先立ち、ロシア国営天然ガス企業ガスプロムは「シベリアの力2」パイプラインがモンゴルを通過することを確認する覚書を同国と結んだ。ガスプロムのアレクセイ・ミレル最高経営責任者(CEO)はその数日後、中国国営石油天然気集団(CNPC)とパイプライン建設に向けた「法的拘束力のある覚書」を締結した。
「シベリアの力2」は、ロシアの西シベリアからモンゴルを経由して中国北部へ年間500億立方メートルの天然ガスを輸送することが想定されている。既に稼働中の天然ガスパイプライン「シベリアの力1」も輸送能力を現行の380億立方メートルから440億立方メートルへ拡張することが計画されており、2027年までに120億立方メートルへと拡張される小規模な極東ルートを合わせると、ロシアの中国向け天然ガス輸送量は年間1000億立方メートルに迫り、かつて欧州に供給していた量の約3分の2に達すると見込まれている。だが、そこには落とし穴がある。それはロシアにとって有利なものとは言えない。
シベリアのパイプラインは単なる社会基盤以上の意義を持つ。「シベリアの力」は、欧州という巨大なエネルギー市場から切り離されたロシアにとっての命綱だ。西側の制裁に加え、欧州諸国が天然ガスの供給元を多様化したことで、ロシアの欧州向けガス輸出量は以前のごく一部にまで減少している。新規パイプライン「シベリアの力2」を敷設することで、ロシアはかつて欧州向けに生産されていた西シベリア産天然ガスを中国向けに出荷できるようになる。



