ビッグテックを題材にベストセラーを手がけてきた元起業家のスコット・ギャロウェイ。「世界最高のビジネススクール教授50人」にも選出された彼が考える富と幸福の意外な関係性とは。
米テック大手4社「GAFA」の台頭を描いたベストセラー本の著者で元起業家のスコット・ギャロウェイ。
ニューヨーク大学スターン経営大学院教授も務める彼の最新刊は、資産形成と稼ぎ方の極意を説くベストセラー『THE ALGEBRA OF WEALTH:一生「お金」を吸い寄せる富の方程式』(児島修・訳、ダイヤモンド社)だ。
なぜ今、「富」を題材にした本を書いたのか。「富の方程式」を構成する要素とは? ギャロウェイに話を聞いた。
──なぜ、『THE ALGEBRA OF WEALTH』を書こうと思ったのですか。
スコット・ギャロウェイ(以下、ギャロウェイ):米国の若い男性が直面している困難について考え、書き、話すことに多くの時間を費やした結果、同書の構想がひらめいた。
これほど急速に、そして大きな苦境に陥った人々は、彼らをおいてほかにいない。十分な教育も仕事も得られず、社会的に孤立している。
彼らは、富の構築・管理に必要なツールなど、幸せな人生のための社会経済的ツールを与えられていない。キャリアの早期に金融リテラシーを学ぶことの重要性が高まっているにもかかわらず、だ。この本を書くことで、若い男性の力になりたいと考えた。
富の構築に不可欠な「人格」
──富の方程式を「フォーカス+(ストイシズム×時間×分散投資)」と定義していますね。「ストイシズム」には、精神的な意味合いが感じられます。
ギャロウェイ:「ストイシズム」、つまり、ストア派哲学の教えとは、自分がコントロールできることと、できないことを明確にすることだ。
例えば、現代の過剰な消費社会では難しいとはいえ、金銭的な誘惑への対応はコントロール可能だ。
また、ストア派哲学は、「何事も、見た目ほど良くも悪くもない」と説く。この教えは、金銭的誘惑を断ち切り、稼ぐことや貯金、人間関係など、本当の幸せにつながることに時間を投じるための「自制心」を培う一助になる。
ストア派哲学は、優れた「人格」も重視する。他人が自分の成功を願ってくれれば、はるかに成功しやすい。裕福な人々の大半は親切で寛大だ。彼らが裕福になった背景には、友人たちとの強力な「助け合いの輪」がある。経済的安定は他人の力にかかっている。
次に「フォーカス」とは、最高の収益をもたらしてくれるところにエネルギーと注意を注ぐことだ。経済的安定への最も確実な道は、労働市場が高く評価することに秀でること、そして、それを収入や事業資本に生かすことだ。
本当に得意なものを見つけ、それに「集中」する必要がある。往々にして、才能は情熱と同じではない。
──経済的自立を目指すうえで、人間関係の重要性を強調していますね。
ギャロウェイ:私は若かりしころ、特に最初の結婚生活など、すべてを犠牲にして働いた。資産形成と経済的安定へと向かう初期段階に、仕事と私生活の均衡を図るのは難しい。あらゆることを同時に手に入れることはできない。
幸福はU字型曲線だ。責任を担うと、幸福度が大きく落ち込む。50代になって、経験や人間関係など、本当に大切なことに喜びを見いだせるようになると、幸福度がはね上がる。
家族や友人は長期的な幸福に不可欠だ。配偶者は、人生の荒波を和らげ、輝きを増してくれる「良きパートナー」でなければならない。良い配偶者は良い投資でもある。良い相手を選ぼう。そして日々、ふたりの関係に投資しよう。
人間関係は「複利」さながらだ。良好な関係は、長く続けば続くほど、得るものも大きい。しかし、努力が必要だ。
相手に点数をつけるのではなく、許し、寛大かつ協力的な態度で接しよう。最も重要なのは相手に寄り添うことだ。



