キャリア・教育

2025.09.23 14:00

富と幸福の本質を見つける「経済的自立の方程式」

スコット・ギャロウェイ|ニューヨーク大学スターン経営大学院教授 (Jonathan Fickies, Bloomberg)

──富の方程式を構成する4つの要素のなかで、特に重要なことは? 

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ギャロウェイ:まず、「ストイシズム」では、「何事も、見た目ほど良くも悪くもない」という教えを基に、自分の感情にとらわれない方法を学ぶことだ。それが、経済的安定と幸福には欠かせない。

次に「フォーカス」では、情熱よりも、お金を稼げそうな「得意なこと」を見つけ、その力を伸ばすことだ。何かに秀でれば、情熱はおのずとついてくる。

3つ目の「時間」で重要なのは、貯金も投資も長く続ければ続けるほど経済的安定を得られる可能性が高まる、ということだ。「貯金力」を鍛え、資金の大半を低コストの「パッシブ投資」に投じ、時間を味方につけて「複利」を活用しよう。始めるなら「今」だ。

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4つ目の「分散投資」では、金融市場の暴落や業界の急変など、予期せぬ大事に備えることが重要だ。ポートフォリオの一部に問題が生じても、分散投資なら、壊滅的な結果を防げる。自分自身の投資判断ミスから身を守る助けにもなる。私自身、何度もミスを犯してきた。あなたも、そうなるだろう。

──パッシブ投資とアクティブ投資を「8対2」にすべきだとする理由は? 

ギャロウェイ:リスク許容度や生活状況は、人それぞれだ。「80:20」は厳格なルールではない。重要なのは、若いころから積極的に貯金し、資金の大半を安全で低コストの金融資産、例えばインデックスファンドなどに投資し、残りをアクティブ投資に回すことだ。

その際、自分の損失許容範囲を把握し、それ以上のリスクを決して負わないことが大切だ。分散投資は金融資産の「防弾チョッキ」だ。まずい投資判断は痛みを伴うが、致命傷を防いでくれる。

私は苦い経験を通して、それを学んだ。1997年に共同創業した「レッドエンベロープ」への思い入れが強く、資金を投入し続けたところ、同社は2008年、米連邦破産法第11条の適用を申請。その結果、私は純資産の7割を失った。それ以来、純資産の1割以上を単一の投資に充てないという「防弾チョッキ」を手放したことはない。

──幸福の本質とは?

ギャロウェイ:私にとって、幸せとは、有意義な人間関係を築き、愛する人々と、さまざまな経験を共有し、お金の心配をせずに済む金銭的余裕をもつことだ。幸せを実現するためのカギがひとつだとは思わないが、大半の人々にとって、経済的安定なしに幸せをつかむのは難しい。 

だが、「お金」と「富」は同じではない。莫大な額のお金を得ている人は多いが、「裕福な人」は少数だ。収入増とともに、税金や支出も増えるからだ。 

裕福とは、受動的所得が「バーンレート(資金燃焼率)」、つまり、支出よりも多いことだ。単に「お金持ち」を目指す人は稼ぎのみに注目し、「富」を目指す人は支出にも注意を払う。要は収入の額ではなく、「収入と支出の比率」だ。それが幸せと大きく関係している。

私の父は、英国海軍の年金と社会保障給付金を合わせた年収4万8000ドルで、裕福かつ幸せに暮らしていた。幸福のカギは莫大な収入ではなく、バーンレート=支出を抑えることだ。


スコット・ギャロウェイ◎ニューヨーク大学スターン経営大学院教授。MBAコースで20年以上、ブランド戦略とデジタルマーケティングを教えている。連続起業家として9つの会社を起業。2012年、「世界最高のビジネススクール教授50人」に選出。著書に『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』などがある。

インタビュー=肥田美佐子 イラストレーション=アダム・クラフト

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