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2025.09.30 16:00

フェラーリの哲学は、整備士が継承する──次世代に向けたFerrari Tech Talentプログラムがスタート

フェラーリが、“整備士”の育成に注力している。そこには、ブランドが長年培ってきた哲学を、どう次世代に手渡すかという課題がある。設計思想や安全性、美意識を読み取り、実践できる人材を育てること。そこに、フェラーリは次の一手を打った。

「Ferrari Tech Talent」は、世界各国で展開されている整備士育成プログラムだ。日本では今年から本格的に始動し、対象は15〜25歳の若い整備士志望者。富士スピードウェイを舞台に、レース現場の見学やプロとの対話、タイヤ交換の体験などを通じて、整備士という職業の持つ厚みや哲学を伝える機会が設けられた。

文化を継承する手段としての整備士育成。フェラーリらしいこの視点に、少しだけ踏み込んでみたい。


フェラーリ・チャレンジのレースが開催された、富士スピードウェイ。レースに向けた準備に余念がない整備士たちを見つめる、揃いのユニフォームに身をまとった若者たちの姿があった。

Ferrari Tech Talentは、レースの現場を通じて整備という仕事の意味を伝えるための育成プログラムだ。ウェブでの公募には800名を越す申込みがあり、そこから厳選された23名の参加者には明確な志望動機があった。

映画やレース、父親との経験をきっかけに、車の美しさや構造に強く惹かれてきたことや、 自分の手で車に触れた実体験から、整備士としての適性や夢を見出していること。

憧れは、やがて「命を守るプロフェッショナル」や「医師のような存在」への意識へと昇華され、 本物に触れたい、より専門的な技術を学びたいという強い学びの意欲につながっている。

参加者は、ピットを歩き、現役メカニックの動きを観察し、自らタイヤ交換にも挑戦する。教科書には載っていない学びが、そこにはあった。

哲学は、現場で手渡される

プログラムは、フェラーリの歴史とブランド哲学に関するセッションからスタートする。
創業者エンツォ・フェラーリによるレースカー開発と市販車販売の輝かしい実績、レースとともに歩んできた技術と美学。目の前の参加者たちは、話にじっと耳を傾けていた。

続いて行われたのは、フェラーリ・チャレンジのグリッドウォークとピット見学。レース直前の緊張感が漂うコース脇で、車両の最終確認を行う整備士の所作に見入る参加者たち。道具の扱い、作業のスピード、整備士同士の無言の連携。そこには、教室では学べない空気があった。

実際に手を動かすワークショップでは、タイヤ交換を体験した。フェラーリの整備士が隣につき、必要な手順を一つひとつ確認しながら進める。

「え、重い!」

全身の体重をかけても動かないトルクレンチに、思わず参加者の口から驚きの声が漏れる。しっかり締められたボルトに苦戦しながらも、彼らは真剣だった。失敗を恐れるより、慣れていく感覚を大事にしているようにも見えた。

整備士が「自由に見ていいですよ」と一声かけると、彼らは一斉にマシンに群がる。しかし、群がる場所がすこし変わっている。

高専で自動車整備を学んでいるという男性はグローブボックスの奥をしげしげと覗き込んで配線のあしらいを観察している。ある専門学校生の女性はホイールハウスに腕を突っ込んでいる。「なにをしているんですか?」と聞くと、「私、クルマを見るとここの深さが気になって、いつも腕で図っているんです」。

プログラムの終盤には、現役の整備士たちとの座談会が行われた。実際の現場ではどんな判断が求められるのか、どういう経験が活きるのか、どこにやりがいがあるのか。参加者は積極的に質問を投げかけ、整備士たちはそれぞれの経験をふまえて丁寧に応えていた。

そのやりとりは、フェラーリがこの仕事を通じて次世代に渡そうとしている価値観のバトンパスのワンシーンだった。

整備士は、車と会話している

北村和士は、フェラーリ正規ディーラー「ロッソ・スクーデリア」のマスターテクニシャンとして、30年以上の現場経験を積んできた。地元の整備工場からキャリアを始め、スーパーカー専門工場や輸入車ディーラーの立ち上げを経て、現在に至る。

初めてフェラーリに触れたとき、惹かれたのは「素材の良さ」だったという。見えないところまで精密に仕上げられた部品、意味を持った構造、美しさと機能が共存する設計。それらすべてが、職人としての感覚を刺激した。

「ただ速いとか、派手だとかじゃない。整備していても、細部に"らしさ"が詰まっている。だから触っていて気持ちがいいと感じていました」

北村は、車の状態を数値だけで判断せず、音や匂い、走りの感触からコンディションを読み取る。それは、イタリアのフェラーリ本社でF1整備技能研修を受けた経験にも通じている。極限の現場では、車との関係性そのものを理解する姿勢が求められるからだ。

「新しいモデルが出ても、フェラーリってどこか"文法"が共通してる。だからこそ、続けてきたことが活きる」

同時に、整備の現場は今も進化を続けている。電動化や電子制御技術の導入によって、整備士には新たな知識が求められている。

「最近の学生は、学校でEVを組んだり、若いうちから電子系の技術に触れている。そこはもう、僕たちの世代にはない感覚です。これからの整備は、そういう人たちが中心になっていくんじゃないでしょうか」

現役世代と若い世代、それぞれが持つ強みが交わることで、新しい整備のかたちが生まれていく。Ferrari Tech Talentは、その接点をつくる場としても機能している。

「F40のかっこよさ」に始まった整備士の夢

森正太がフェラーリに惹かれたのは、中学生のときに見たF40だった。その造形美に心を掴まれ、「いつかこれを扱えるようになりたい」と思い、地元・名古屋の正規ディーラーであるコーンズの門を叩いた。

現在はメカニック兼アドバイザーとして、最新モデルからクラシケまで幅広く整備を担当している。設計図が残っていないクラシックカーに向き合うには、知識と経験、そして想像力が求められる。

「新しいモデルには最新機器の知識が、クラシックカーには歴史や当時の技術を理解する力が必要です。両方を学べるのがこの仕事の魅力です」(森)

今やフェラーリの整備も、電動化や電子制御の技術が前提になっている。森は、クラシケを通じてフェラーリらしさの蓄積を知り、最新技術によって現場がどう変わっていくかも見続けている。

「整備士って、学び続ける仕事なんです。昔のやり方にも、今の技術にも強くないといけない」

レースでの経験も、そうした学びを後押ししている。クラッシュ後の車体が戻ると、整備士たちは無駄のない動きで修復に取りかかる。判断と作業が同時に進むような空気のなかで、学生たちは整備という言語を感じ取る。

「何をどの順番でやるかが自然に決まっていて、誰も焦ってない。整備がチームの言語であることを象徴するシーンですね。最初はF1でも映画でもいい。自分の"好き"が、人を支える技術になる。そういう道があるって、知ってもらえたら嬉しいです」

フェラーリという最高峰のメーカーにあっても、その整備の道は開かれている。その入口に立つ若者たちと、そこに手を差し伸べる整備士の姿が、今回のプログラムにはあった。

未来の整備士たちへ

フェラーリが取り組む「Ferrari Tech Talent」は、整備士という職業が内包する思想、美意識、責任感という、見えない価値を次世代へつないでいくための試みだ。

参加者たちが目にしたのは、静かな緊張が張り詰めるピットの空気、無駄のない整備士の動き、そして、誰もが手を止めず自分の役割を果たし続けるチームの姿。

そこには、言葉では伝わらない哲学がある。それを、本社の工場ではなく、もちろん座学でもなく、レースの現場で次世代の整備士に見せて伝えようとする。

「夢について現実的に考えることができ、明確なビジョンを持つきっかけになった」とは参加者の声だ。ほか「よりフェラーリで働きたいと思った」など、フェラーリの思いは彼らに深く届いている。

クラフツマンシップと先端技術を融合させる、いかにもフェラーリらしいやり方ではないだろうか。


フェラーリ テックタレントプログラム 特設サイトはこちら
https://forbesjapan.com/feat/ferrari_tech_talent/

Promoted by Ferrari / text by Tsuzumi Aoyama / photographs by Tomohiko Ogihara