世界で最も大気の質が良い地域と悪い地域は?
2024年版リポートでは、ジブチやモザンビーク、チャドなど、いくつかの国が、計測が新しく始まるか再開され、ランキングに登場している。中でも、前年に欠測状態だったチャドは、今回は全体のランキングでワースト1位になり、大気汚染が最も激しい国となった。チャドに続く、バングラデシュ、パキスタン、コンゴ民主共和国、インドの4カ国が、大気汚染が激しい国のワースト5を占めている。
逆に、イラン、アフガニスタン、さらに2023年のランキングではワースト5位に挙げられていたブルキナファソなど、2024年版のランキングから名前が消えた国もある。これはデータが得られなかったためだ。
驚くことに、PM2.5濃度がWHOのガイドラインである5.0µg/m³という基準値を下回った国や地域、領土は、全部で12しかなかった。その多くはラテンアメリカ、カリブ海、オセアニアに位置している。これには、全体のランキングでベスト5に入った国や地域も含まれており、上位から順にバハマ、バミューダ、フランス領ポリネシア、米領ヴァージン諸島、プエルトリコと並んだ。これに加えて、カリブ海に浮かぶいくつかの国々、オセアニアではオーストラリアとニュージーランド、さらに欧州ではエストニアとアイスランドが、この非常に限られた「空気のきれいな国」のリストに名を連ねている。
米国は年平均のPM2.5濃度が7.1µg/m³で、世界で22番目に大気のきれいな国にランキングされた。これは、カナダ(6.7µg/m³)の3つ下、英国(7.4µg/m³)の3つ上の順位だ。ただしこの3カ国はいずれも、WHOの基準値を満たしていない(日本は8.6µg/m³で、英国の5つ下)。
世界で最も大気汚染が激しい首都は?
一方、世界の首都のランキングを見ると、2024年に世界で最も大気汚染が激しかった街は、考えさせられるような驚くべき汚染度を記録している。
世界の首都で最も大気汚染が激しかったのはインドの首都デリーで、年平均のPM2.5濃度は実に91.8µg/m³に達した(前段で述べたように、WHOのガイドラインの上限値は5.0µg/m³だ)。インドでは今でも、大気汚染が健康を阻害する大きな要因となっており、IQエアのリポートでは、大気汚染により平均寿命が推計で5.2年減少していると指摘している。
ただし、2024年の年平均では空気の質が最も悪かったとはいえ、劣悪な状況にあるのはデリーだけではない。世界で最も大気汚染が激しい都市に関する調査では、ワースト10のうち6つをインドの街が占めているからだ。
次に大気の汚染が激しい首都は、チャドのウンジャメナだ。チャド自体が大気質ランキングで、(信頼できるデータが入手できる場合には)ワースト1の常連となっている国だ。ウンジャメナの年平均PM2.5濃度は91.6µg/m³だった。この国の主な大気汚染源は、サハラ砂漠から吹き寄せる鉱物質の砂塵で、ハルマッタンと呼ばれる乾燥した強風が吹き付ける時期に、最も状況が悪化する。
ワースト3位になったのは、バングラデシュの首都ダッカで、年平均のPM2.5濃度は78.0µg/m³と、WHOの基準値の15倍以上に達した。続く4位は、コンゴ民主共和国の首都キンシャサ(58.2µg/m³)で、パキスタンの首都イスラマバード(52.4µg/m³)がわずかな差で続いた。


