リッチリスト

2025.09.21 10:00

トランプの娘婿クシュナー、資産1470億円に到達 中東資金の支援で

ジャレッド・クシュナーと、妻のイヴァンカ・トランプ(Photo by Arturo Holmes/Getty Images for REFORM Alliance)

ジャレッド・クシュナーと、妻のイヴァンカ・トランプ(Photo by Arturo Holmes/Getty Images for REFORM Alliance)

ジャレッド・クシュナーはイヴァンカ・トランプの夫であり、トランプ米大統領の娘婿でもある。トランプ政権第1期には大統領上級顧問として中東政策を主導し、イスラエルとアラブ諸国の国交正常化交渉に関与した。その経験と人脈を武器に中東の有力ファンドから巨額の資金を調達。さらに、富裕層の資産防衛や地位誇示の象徴とされる南フロリダの高級不動産の値上がりも、彼の資産を押し上げる追い風となった。これらを背景に彼は、義父トランプや実弟ジョシュと並び、資産10億ドル(約1470億円)強のビリオネアとなった。

中東人脈とフロリダ不動産が追い風となり、資産は1470億円に到達

クシュナーがこれまでにプライベート・エクイティで収めた最大の成功は、10年以上前から買収を試みていたイスラエル企業への投資だ。2014年に33歳だった彼は、父と祖父が共同創業したニューヨークの不動産会社クシュナー・カンパニーズのCEOを務めていた。新たな投資先を探していた彼が目をつけたのは、イスラエルの保険・金融大手フェニックスだった。

クシュナーは同社の47%の株式を取得する暫定合意にこぎつけ、売り手からの融資も取り付けた。しかし、当初は順調に見えたこの取引は、規制の壁に阻まれて頓挫した。

その約10年後、彼は再びその機会をつかんだ。クシュナーは、2021年初めに設立したプライベート・エクイティ会社アフィニティ・パートナーズを通じて、2024年7月以降に約2億5000万ドル(約368億円。1ドル=147円換算)を投じ、フェニックス株の約10%を取得した。この投資は、同社にとって最大級のものであると同時に、「最高の成果」をもたらしたと、44歳になったクシュナーは胸を張る。彼は、アフィニティへの投資で、すでに9倍以上のリターンを上げたと語っている。

フェニックス投資の成果に加え、中東の有力筋から巨額の資金を呼び込んだことで、クシュナーはついにビリオネアとなった。フォーブスは彼の資産が、1年前の少なくとも9億ドル(約1323億円)から増加し、10億ドル(約1470億円)強に達したと推定している。

いま彼は、資産額52億ドル(約7644億円)の弟ジョシュや、73億ドル(約1.1兆円)の義父トランプ大統領と並んで、ビリオネアランキングに名を連ねている。ただしクシュナーは、テック関連への投資を主軸とするジョシュや、近年暗号資産で収益を上げているトランプとは異なり、独自の道を歩んでいる。

ホワイトハウスの人脈を武器に、6762億円の投資会社を設立

クシュナーは2017年に家業の不動産会社を離れ、1期目のトランプ政権の大統領上級顧問に就任した。その職務を通じて中東に深く関与し、最終的にはイスラエルとUAE、バーレーンとの国交正常化合意「アブラハム合意」の交渉に携わった。2021年1月、トランプがホワイトハウスを去ったその月、彼はマイアミ近郊のサニーアイルズビーチでアフィニティ・パートナーズを設立した。同社は累計46億ドル(約6762億円)を調達。そのうち15億ドル(約2205億円)は昨年集めたもので、資金はカタールの政府系ファンドやアブダビ拠点のルネート(首長ターノーン王族のロイヤル・グループ傘下)といった初期からの支援者から提供された。

823億円の持ち分を筆頭とする資産ポートフォリオ

クシュナーが全株式を握るアフィニティの企業価値は、フォーブスの推計で現在2億1500万ドル(約316億円)に達しており、昨年10月の1億7000万ドル(約250億円)から上昇した。この額は、5億6000万ドル(約823億円)と評価されるクシュナー・カンパニーズの20%持ち分に次ぎ、彼の資産の中で2番目に大きい。

フロリダのインディアン・クリーク島での不動産購入も、彼の巧みな投資の1つだ。「ビリオネアの要塞」とも呼ばれるこの島には、ジェフ・ベゾスやカタール首長も別荘を所有している。クシュナーは2020年にこの島の邸宅を3200万ドル(約47億円)で購入し、妻イヴァンカと共に暮らしている。この家の価値は現在、住宅ローン残高を考慮しない評価額で少なくとも1億500万ドル(約154億円)に達し、購入時の約3倍に膨れ上がった。

クシュナーの残りの資産は、現金や美術品、その他の個人投資で構成されている。ただし、彼は義兄弟やトランプ大統領と異なり、暗号資産には関わっていない模様だ。

次ページ > AIから金融まで――拡大するアフィニティの投資戦略

翻訳=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事