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2025.09.21 10:00

トランプの娘婿クシュナー、資産1470億円に到達 中東資金の支援で

ジャレッド・クシュナーと、妻のイヴァンカ・トランプ(Photo by Arturo Holmes/Getty Images for REFORM Alliance)

25兆円を動かす「イスラエルのJPモルガン」への賭け

そして忘れてはならないのがフェニックスだ。クシュナーは、イスラエルの保険会社として初めてプライベート・クレジットや資産運用に進出した同社を、2022年の段階で再び投資対象として検討し始めていた。しかし2023年10月7日、ハマスによる攻撃が発生し、地域情勢は一変する。当時、クシュナーは同社株が本来の価値を過小評価されていると考えていた。フェニックス株は、保険会社として帳簿価値で取引されていたが、実際には手数料収入を生むビジネスモデルに変貌しており、本来なら利益ベースで評価されるべきだと見ていたのだ。

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アフィニティが最初にフェニックス株を取得したのは2024年7月だった。「当時は戦争による不確実性からイスラエルに投資するのを怖がる人が大半だった。しかし、私たちはフェニックスを過小評価された中核資産だと捉え、『イスラエルに大きく賭けよう』と決めたのだ」とクシュナーは振り返る。

市場の過小評価を見抜き、レバレッジでリターンを9倍に

フェニックスは約1700億ドル(約25兆円)の資産を運用しており、クシュナーは「イスラエルのJPモルガン」だと評している。市場もその見方に追いつき、同社の株価はほぼ3倍に上昇した。しかし、クシュナーはレバレッジを効かせて投資したため、投下資本の価値は元本の9倍以上に達している。

クシュナーはフェニックスで公式な役職を持っていないが、同社と「非常に活発な対話」を続けていると語る。彼は、フェニックスの他の出資者よりも頻繁に同社との会合を持ち、会社の最新情報や市場動向、投資家や資産運用会社とのつながりのアイデアなどを数週間に一度話し合っているという。

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「彼は少数株主だが、存在感のある少数株主だ」とフェニックスのアイアル・ベン・サイモンCEOは冗談めかして言う。副CEOのデイビッド・アレクサンダーもこう付け加える。「私たちは世界の数多くの一流プライベート・エクイティ・ファンドと付き合ってきたが、彼は優れたチームと体制を築いており、洞察力に富んだ質問を投げかける。この分野のトップの投資家と接しているように感じる」

破産申請や開発の頓挫、すべてが順風満帆ではない実情

もっとも、クシュナーの投資がすべて成功しているわけではない。アフィニティが2022年に出資したカリフォルニアの住宅用太陽光発電向け融資会社モザイクは、6月に連邦破産法11条の適用を申請した。

また、クシュナーが計画していたセルビアの首都ベオグラードでの5億ドル(約735億円)規模の高級開発プロジェクトも、5月に行き詰まった。対象地は旧ユーゴスラビア軍本部跡地で、1999年にNATOの爆撃を受けて廃墟となっていた。ここにトランプブランドのホテルと高級タワー3棟を、ドバイのビリオネア開発業者モハメド・アラバーと共同で建設する計画だった。この敷地は文化遺産に指定された後、政府が解除していた。しかし地元検察は、文化当局者が遺産指定解除のための重要文書を偽造していたと発表した。

しかしクシュナーは、「雇用を生み税収をもたらす美しいホテルを建てるか、それとも爆撃を受けたままの町の景観を損なう建物を残すか、と問われたら前者のほうがいいはずだ」と語り、このプロジェクトは必ず実現すると自信を見せている。「設計はすでに完成しており、実現に向けた計画や準備も進めている」

今後を見据え、アフィニティは引き続き投資案件を探している。たとえば、クシュナーはメキシコのまだ社名が明かせないインフラ企業への投資を予定しているが、トランプ政権の関税政策の影響で遅れている。そのため彼は、まずは米国製設備の調達を増やすよう求めている。

評価は時期尚早も、尽きない中東マネーが支える未来

アフィニティは設立から約5年が経つが、クシュナーはプライベート・エクイティの世界ではまだ小規模なプレーヤーに過ぎない。いくつかの成功例はあるものの、この業界はリターンを10年単位で測るため、ポートフォリオの成果を判断するには時期尚早だ。それでも中東の富裕層の投資家たちは、同社のファンドに資金を投じ続けている。この流れが続けば、投資の実績がどうであれ、クシュナーの資産規模には大きな影響は及ばないだろう。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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