北米

2025.09.21 08:00

「選挙賭博」解禁で予測市場が147兆円規模に成長、トランプ陣営も新興に関与

Kalshi共同創業者のタレク・マンスール(Photo By Diarmuid Greene/Sportsfile for Web Summit via Getty Images)

金融界の大物が次々と参入し、競合も予測市場で台頭

予測市場に資金を投じるのは、シュワブやクラビス、チャオのみではない。この分野は今、金融界のビリオネアたちが相次いで投資するホットスポットになっている。インタラクティブ・ブローカーズ創業者のトーマス・ピーターフィー(純資産720億ドル[約10.6兆円])は、2021年のエンジェルラウンド直後にKalshiの買収を試みたことをフォーブスに明かした。実現はしなかったが、彼はこの分野を諦めず、1年前にForecastExと呼ばれる子会社を設立した。ForecastExはKalshiと競合し、ニューヨーク市長選や2025年末のビットコイン価格を対象に予測市場を提供している。

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2024年4月には、ジェフ・ヤス(同650億ドル[約9.6兆円])が率いるクオンツファンドのサスケハナ・インターナショナルが、主要マーケットメーカーの一角としてKalshiに流動性を供給する提携を結んだ。Kalshiは最近では、ブラッド・テネフ(同64億ドル[約9408億円])のロビンフッドと組んで、小口投資商品にイベント契約取引を加えた。

さらに、競合のPolymarket(ポリマーケット)も強力な支援者を得ている。その顔ぶれには、パランティアの共同創業者のピーター・ティール(同253億ドル[約3.7兆円])、イーサリアム創設者のヴィタリック・ブテリン、エアビーアンドビーの共同創業者ジョー・ゲッビア(同77億ドル[約1.1兆円])が名を連ねる。PitchBookのデータによると、同社の評価額は、8月にファウンダーズファンドが主導した資金調達時に10億ドル(約1470億円)に達した。

ニュースサイトThe Informationによると、KalshiとPolymarketはいずれも新たな資金調達を進めている。評価額はそれぞれ50億ドル(約7350億円)、90億ドル(約1.3兆円)に達する可能性がある。

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選挙賭博の解禁が起爆剤に――Kalshiで1470億円、Polymarketでは5292億円が動く

選挙やスポーツへの賭けは、決して目新しいものではない。米国ではこの種の賭けが1800年代から存在していた。将来の出来事に対し「イエス」か「ノー」の契約を売買する、現代的な予測市場の仕組みが考案されたのは、1988年のアイオワ大学でのことだ。そして、2010年代にはIntrade(イントレード)やPredictIt(プレディクトイット)といった初期のサービスが一般公開されていたが、規制の壁や人気不足で大きな広がりは見られなかった。

Kalshiについても、決して最初の試みではない。ただし昨年10月、連邦裁判所が同社に大統領選挙に対する賭けの提供を認めた。これにより、100年以上続いた「選挙に対する賭けの禁止」が打ち破られ、同社は歴史を作った。この流れが、状況を一変させたのだ。

選挙賭博が規制当局の承認を受けると、Kalshiのユーザー数は1カ月足らずで10倍に膨れ上がり、選挙当日までに200万人が10億ドル(約1470億円)超を賭けた。Polymarketでは、「トランプかハリスか」をめぐる賭け金の額が36億ドル(約5292億円)に達した。

次ページ > 「リスクヘッジ」か「真実の追求」か、投資家は予測市場の意義を語る

翻訳=上田裕資

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