日本では、選挙や経済イベントを対象とする賭けは刑法の賭博罪に該当し、違法だ。これに対し米国では、選挙やスポーツを対象とした賭けは19世紀から存在し、現代の「予測市場」は大学研究を起点に発展してきた。規制の壁により拡大は長らく限定的だったが、2024年に連邦裁判所が大統領選挙への賭けを解禁したことで状況は一変した。事実として、予測市場新興のKalshi(カルシ)では選挙前に10億ドル(約1470億円)超の賭け金が動いた。
一方、投資家には市場全体が将来的に1兆ドル(約147兆円)規模に達するとの見方が広がっている。ウォール街の大物やシリコンバレーの起業家が次々に参入し、Kalshiもトランプ陣営との人脈を追い風に評価額を急伸させ、市場の主導権を狙っている。
ウォール街の伝説シュワブも投資、初期出資でKalshiの評価額が約176億円に到達
2023年の凍えるような冬の朝、売買手数料が無料の証券会社の創業者、ビリオネアのチャールズ・シュワブが、ニューヨーク・ソーホーにあるまだ無名の予測市場のスタートアップKalshi(カルシ)のオフィスを訪れた。彼は、中身があふれそうなほど分厚いバインダーをいくつも腕に抱えていた。
ウォール街の伝説的人物ともあろう人が、新興企業をこれほど念入りに調べてきた。当時27歳だった共同創業者のタレク・マンスールとルアナ・ロペス・ララは、その事実に衝撃を受けていた。その2年前にシュワブとウォール街の大物ヘンリー・クラビスは、マンスールの会社の評価額を1億2000万ドル(約176億円)とした3000万ドル(約44億円)の調達ラウンドにエンジェル投資家として参加していた。
「最初の電話から数分で、チャック(シュワブ)は『投資したい』と言ってくれた。『この会社は、自分がチャールズ・シュワブを創業した頃を思い出す』と。そして、金融市場を根本から変える力を持つ会社に久々に出会ったと話してくれた」と、現在29歳のマンスールは語る。
2024年、評価額が2940億円に
現在、Kalshiはシュワブにとって、自身の名を冠した時価総額1760億ドル(約25.9兆円)の証券会社以外で最大級の投資先になっている。Kalshiの評価額は、6月にシタデル証券のペン・チャオ(趙鵬)CEOが参加した資金調達で20億ドル(約2940億円)に達した。



