先週のiPhone 17 Proの発表に際して、ティム・クックCEOとそのチームは新しいiPhoneファミリーのデザインとスタイルに焦点を当てた。多くの人にとって、これは「かつてのアップル」への回帰だった。だが、他のあらゆるメーカーが自社端末のAI機能を前面に出し、グーグルのAI「Gemini」を活用している状況を踏まえると、これは異例のアプローチでもあった。アップル自身も、iPhone 16ファミリーの発表前後となる2024年には、この流れに追随していた。
しかし、後付けの頭字語(バックロニム)めいた「Apple Intelligence」(アップル・インテリジェンス)は、2024年の開発者会議WWDC(Worldwide Developer Conference)でアップルが掲げた約束を果たしていない。iPhone 17発売時に搭載されると見込まれていた機能は年末に延期され、さらに先送りになったものもあり、実地でのデモすらまだ行われていない機能も多い。ましてやiOS 26の一般公開版に搭載されるには至っていない。
グーグルのGeminiが市場を導く
AI競争はアップルを置き去りにしている。グーグルは、スマートフォンでAIを利用できるとはどういうことかという定義づけに全力で取り組んでいる。
デザイン面でいえば、最近登場したPixel 10とPixel 10 Proは、Pixel 9シリーズからの変化は少ない。しかし一方で、端末上で動作するソフトウェア、すなわちグーグルの純正アプリ群とAndroid 16の中核機能によって、スマートフォンの構造的な変化を示している。それは、“アプリ中心の環境”から“Agentic AI(エージェント型AI)中心の環境”へと移行していくというものだ。
AI機能を打ち出し、消費者にアプローチするAndroid端末メーカー
またサムスンが、「Galaxy AI」を武器にAIツールを使うユーザーの大きなシェアを握っている点も挙げておきたい。2025年初頭のGalaxy AIユーザーは2億人に達し、同社は年末までに4億人に増やすことを目標に掲げている。Galaxy AIのフルスイートは、今やGalaxy S25 FEのような価格重視の端末にも搭載されている。
中国系のHonorも、ディープフェイク検知、ライブのAI通話翻訳に力を入れている。折りたたみスマートフォンに搭載されたMulti-Flex機能では、マルチタスク環境におけるAIの進歩を前面に打ち出した。OnePlusはAI機能をカスタマイズ可能な物理ボタン「Plus Key」に集約し、Mind Spaceクリップボード、AI Search、AI VoiceScribeといった機能へ素早くアクセスできるようにした。
各メーカーがAIを前面に押し出し、消費者にもたらす違いを示している。だがそれはアップルを除いての話だ。アップルはいまだに、最低限の参加資格を果たすにすぎない基本的なAIツールの領域にとどまっている。



