経営・戦略

2025.09.17 13:30

世界初の「脳を再生する薬」、日本発バイオベンチャーの新時代到来(森敬太)サンバイオ

森 敬太|サンバイオ代表取締役社長

──米国での承認の見通しは。

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森:4年後以降に、米国での上市を見据えている。日本の外傷性脳損傷の患者数は6万人。一方で米国の患者数は551万人と日本の100倍近い。脳梗塞についても、日本の119万人に対し米国は685万人で、はるかに大きな市場規模をもつ。米国への展開は大きな成長ドライバーになるだろう。

──19年に脳梗塞の患者を対象とした臨床試験の不調で株価が暴落した「サンバイオ・ショック」は「バイオベンチャーはハイリスク・ハイリターン」との印象を与えた。これを乗り越えて治療薬の販売が実際に始まれば、後続のベンチャーにとってもロールモデルとなる。

森:日本では我々がパイオニアであるがゆえに、サンバイオ・ショックを見て「バイオは危ない」ととらえるフィルターがある。ところが、米国の投資家のフィルターを通して見ると、「薬の開発をしている企業で、臨床試験が失敗したら株価が5分の1になるのは当たり前だよね」という話になる。「臨床試験が成功した」「承認が取れた」となれば、今度は株価はバーンと上がるのを日常的に見ているからだ。

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我々は米国で創業しているので、ずっと後者のフィルターを意識してやってきた。一方で、日本に上場しているので、前者のフィルターも意識しなければならない。しかし、最終的に開発が進んで困っている患者さんに治療薬を届けることができれば、結果として会社も成長していくし、我々はそれを目指している。 

──昨年の承認の前後でも「条件付き」を巡って株価の乱高下があった。また、今年6月25日にアクーゴが販売できるようになる時期の想定を遅らせると発表したことで株価が急落。情報発信の面では課題があるのでは。 

森:改善の余地があるのは事実だ。新しいことをやっているため、伝える側と受け取る側でもフィルターが違う。そういうところはより意識して丁寧に発信していかなければいけない。今まさに、努力の最中だ。

──日本のバイオテックや再生医療の今後についての展望は。

森:今年5月に、バイオテクノロジー関連企業でつくる一般社団法人「日本バイオテク協議会」の会長を拝命した。仲間とともに、1社でも多く成功して、盛り上げていきたいと思っている。14年に国が再生医療の制度的枠組みをつくってから10年が経過したが、日本の再生医療はまだまだ道半ばと言える。成功実績こそが、業界を育てる原動力になるだろう。


もり・けいた◎麒麟麦酒、米サンフランシスコ・ベイエリアのインォマティクス関連企業を経て、2013年にサンバイオを設立。東京大学大学院農学系研究科 農芸化学専攻修了。カリフォルニア大学バークレー校経営学修士(MBA)。

文=中居広起 写真=ヤン・ブース

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