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2025.09.19 14:00

マッチングアプリにうんざり? Z世代の新潮流「逆盛り」を心理学者が解説

Shutterstock.com

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自覚しているかどうかにかかわらず、私たちは今、絶え間ないパフォーマンスの世界に生きている。どこまでが現実でどこからがパフォーマンスなのか、日を追うごとに見分けがつきにくくなってきている。SNSや出会い系アプリのフィードは完璧に磨き上げられ、フィルターが欠点を取り除いてくれる。そして今、人工知能(AI)が登場し、さらに加工されたペルソナが生まれる可能性が高まっている。

心理学者のトーマス・クラン博士は2019年のTEDMEDの講演で、若者の間で完璧主義が台頭していること、そしていかに多くの人が完璧主義であることに誇りをもっているかについて語った。クランは、社会的に規定された完璧主義、つまり他人から完璧であることを期待される感覚はここ数十年で倍増していると警告する。これがゆくゆくは不安やうつ、バーンアウト(燃え尽き症候群)を助長している。

自分の価値が「いいね!」やランキングで測られる文化においては、デートさえも演じる場と化していても不思議ではない。人々は現実からかけ離れた自分自身を見せるかもしれない。そして、このようなデート文化における信憑性の欠如からくる圧倒感と失望は結果的にデートの新たなトレンドとなっている。

意図的に自分を過小評価する「逆盛り」

「逆盛り」という最新のトレンドは、Z世代がパートナー探しにおいてパフォーマンスより信憑性を重視するようになっていることを示している。

逆盛りとは、よりリアルな部分を見つけるために、ネット上で意図的に自分を過小評価することを指す。文字通り、「盛る」こととは正反対だ。盛るというのはネット上では偽りの自分を見せる、時にはまったく別人になって恋愛目的で相手の興味を引こうとすることが多い。

交際相手を選りすぐる際に表面的なデジタルの情報に大きく頼るのであれば、何枚かの写真や短い経歴、気の利いた素早い返事が最も重要に感じられるのは自然なことだ。自分をうまく「売り込まなければ」というプレッシャーを感じるのも当然だろう。

結局のところ、多くの人にとってつながりを探る最初の1歩は、オンラインでいかに効果的に注意を引くかにかかっていることが多い。

だがこれは重要な問題を提起している。洗練された、あるいはほとんど「ブランド化」された自分を前面に出すことは、本当に役に立っているのだろうか。スワイプ操作や「いいね!」が増えるかもしれないが、それが必ずしも相性の良さや本物の結びつきにつながるとは限らない。

実際、多くの人にとって、それは失望や満たされることのない期待を招くことになり、やがて疲れを感じることになる。

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翻訳=溝口慈子

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