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2025.09.22 10:00

AIで進む「PE業界変革」 データ駆動型の案件創出、デューデリ再構築──判断力強化の武器に

Shutterstock.com

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世界有数のプライベート・エクイティ(PE)ファームであるカーライル・グループでは、業務サイクルが週単位から時間単位へと劇的に短縮されている。かつてアナリストたちは、財務諸表や各種開示資料の精査に深夜まで追われていたが、現在では生成AIを活用することで、デューデリジェンスに要する時間を数分の一にまで削減できるようになった。同社では、企業調査から信用評価に至るまで、日常業務のあらゆる領域にAIツールを組み込んでいる。

カーライル・グループの最高イノベーション責任者を務めるルシア・ソアレスは、「社員の9割がChatGPTやPerplexity、Microsoft Copilotといった生成AIツールを活用している」と語る。彼女によれば、クレジット投資の担当者は、数週間を要していた企業評価をわずか数時間で完了できるようになったという。スピードと正確性が競争優位を左右するPE業界において、これは単なる業務効率化にとどまらず、業界の運営モデルそのものを根底から変革する動きである。

カーライルが特別というわけではない。ベイン・アンド・カンパニーが運用資産3.2兆ドル(約473兆円)規模の企業を対象に実施した調査によると、ポートフォリオ全体で生成AIを活用している企業はまだ少数であるものの、導入によって測定可能な成果を上げている企業は既に20%近くに達している。また、93%の企業が今後3~5年以内に実質的な利益を得られると見込んでいるという。こうした状況は、AIがもはやパイロットプロジェクトの段階を超え、PEの戦略において標準的に利用されるツールへと進化しつつあることを示している。

データ駆動型の案件創出

案件創出は、膨大で雑多な情報の中から重要なシグナルを見極める作業だ。しかし、AIの導入により、その精度と効率は格段に高まっている。サーチファンドであるAone Partners(アオン・パートナーズ)の創業者、ゲリラ・ゼネベ・ベケレにとっても、AIは業務に大きなインパクトをもたらしている。

「市場に出ていない非公開案件を探す場合、サーチファンドの世界で『リバーガイド』と呼ばれる業界内の強力なネットワークに頼るか、デジタル情報からディールの準備が整っている兆候を見極めるかのいずれかだ」と、ベケレは語る。「2年前には、M&Aのワークフローを完了させるのに1週間かかることもあったが、現在では社内のAIシステムを使ってわずか半日で処理できるようになった」。

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編集=朝香実

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