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筆者がいままで会った社長の数は、およそ5,800人。タイプはさまざまだが、上場を果たした経営者には、ある共通の特徴がある。「白い嘘つき」であることだ。

 (中略)受験エリートで起業初心者は、それがなかなか難しい。コンプライアンスの意識が妙に強く、また事実か事実でないかに対する分別もすごくあるので、そこはとても信頼がもてるが、でも最後の最後で「成功するかもしれない」というような言い方をしがちなのである。
 実際に成功をしている経営者は、その辺りの「白い嘘」のつき方が大変に上手だ。社員についての評価は実はかなり冷徹にしているのに、一方で、面と向かって「君のおかげで会社が回っている。ありがとう」と固く握手をできたりする。それはつくべき嘘であり、「白い嘘」である。経営者が初心者マークのときは妙に正直すぎたりする。
 社員は経営者の顔色に敏感である。暗い顔をしていると、決算の数字が悪いのではないか、会社の状況が悪いのではないか、あるいは自分が嫌われているのではないか、評価が低いのではないか、と邪推を始める。しかたがない。人に仕えるということはそういうことだ。評価がすべてである。

 そこで経営者は、時には数字が悪いことを共有しつつも、明るい未来を伝えたり、将来の理想やいま歯を食いしばる意義をしっかり伝えなければいけない。「白い嘘」をいかにつけるか、は私が起業家や経営者を見る大きなポイントの一つだ。
 では、どのような嘘(白い嘘)をついていいのか。次の4つだ。
・会社の将来に対する(過剰すぎない)楽観的な態度、姿勢
・投資家や社員に対する明るい期待や感謝の気持ち
・ 顧客に対する分け隔てのない態度
・ ビジョンやミッション
 そもそも、ビジョンこそが白い嘘なのかもしれない。しかし、白い嘘には大事なルールがある。それを自分が本当に期待しており、そのための努力や献身を惜しまないことだ。そのような態度で白い嘘をつくと、女性はきれいになり、社員は元気になり、夢が実現できる。

 三国志の英雄、曹操の有名なエピソードがある。
 曹操の一団が行軍中に道に迷い、兵士たちがのどの渇きを訴え始めた。そこで曹操が、「前方に梅の林があり実がなっているから、それを食べて渇きをいやせ」と言ったところ、兵士たちの口に唾液が生じ、一時的に渇きをしのぐことができたという話。
 梅林止渇(ばいりんしかつ)というエピソードだが、これこそリーダーの仕事であろう。梅林止渇こそが、白い嘘の代表なのである。

藤野英人

 

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