パレスチナ・ガザ地区の人々は今、戦争による激しい暴力と食料不足による飢餓にさらされている。
2023年10月にイスラエルとの戦闘状態に入ったガザでは、食べ物をはじめとする日用品の流通がほぼ滞り、避難を続ける住人たちの行き場は、日々失われている。
そんな、人間が自身の命を守ることで精一杯であるはずの現状を前に、安全な国にいる筆者が、動物やペットの境遇を案じることは憚られると考えていた。だが、それは違っていた。
現地には、危険を顧みず、自らと家族が収入を得て生き延びるため、そして無力な動物たちの命の尊厳を守るために、今も戦っている人々がいる。
人も動物も飢餓に苦しむ
ガザで暮らす26歳の獣医師、アイエド・マフムード・アブ・ネジェム(Ayed Mahmoud Abu Nejem)さんは、次のように語る。
「ガザの人々も、人間性を持っています。彼らは、ペットを爆撃や死に見舞われるような状況へ置き去りにしません。ほとんどの人は、頻繁に避難を強いられる中でも、ペットを一緒に連れて行き、食べ物を見つけるためにあらゆることをしています」
アイエドさんは、ガザで学んだ現地最年少の獣医師で、姪っ子らを含む13人の家族とともに暮らしている。破壊がくり返されるガザを、北部から南部へと、すでに6回避難した。食料は乏しく、ほんの一握りのレンズ豆を手に入れるために、何時間も探し回ることが彼の日常だ。
そのような状況の中で、アイエドさんは、獣医師としての仕事を続けている。彼の元には、治療を必要とする多くのロバや馬、そして猫たちがやって来る。動物たちもまた、人と同じく飢えと脱水症状に苦しみ、ミサイルの破片による重度の火傷や傷を負っている。定期的なワクチン接種や駆虫薬の投与ができず、皮膚と消化器の寄生虫症や、呼吸器の感染症も急速に蔓延しているという。
中でも、最大の問題は飢餓だ。猫たちは、草、パン、レンズ豆など、あらゆるものを食べて空腹を満たしている。馬やロバの飼い主は、傷んだ食べ物を餌にするために彼らをゴミの散乱する中へ連れて行くしかない状態だ。また、浄水設備が機能せず、水は塩辛く、動物たちに胃腸障害を引き起こしている。



