人はいま「修繕」になにを再発見するのか

TERASの宇都宮のアトリエにて。ミニトマトのペイントに合わせて刺し子を施す

栃木県宇都宮市を拠点とする「TERAS(テラス)」は、刺し子やボロを活用した商品を展開するアパレルブランドです。宇都宮にアトリエを、原宿に直営店を持ちます。

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彼らに惹かれるきっかけとなったのは、TERAS主催の刺し子ワークショップに参加したときにお手本として見せてもらった、大判のボロのタペストリーでした。それは、刺し子と聞いて連想されるような、藍染の生地に白糸を正確に刺して幾何学模様を作るようなものではありませんでした。

ワークショップで見たボロのタペストリー(左)、アトリエの壁にかけられていたボロ(右)
ワークショップで見たボロのタペストリー(左)、アトリエの壁にかけられていたボロ(右)

使われている古布には色褪せや裂け目がところどころにあり、時間の経過や苦境さえも想像させる存在感があります。そして、その上を自由に楽しく駆け回る縫い目が、異質ながらもどこか調和しています。重さと軽さが共生するような不思議な魅力に、一瞬で取り憑かれてしまいました。

ワークショップでお会いした企画・営業を担当する山中知博さんにお招きいただき、後日、宇都宮市のアトリエを訪れました。そこには、木製のテーブルとおしゃれなシーリングランプが並べられ、カフェのような温かくオープンな空間がひろがっていました。なんとも言えない居心地の良さが作業に没頭する縫い手さんの雰囲気からも感じられます。軽やかで魅力ある縫い目がここから生まれたことに納得がいきました。

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山中知博さん
山中知博さん

TERASの大きな特徴のひとつは、就労継続支援A型事業所として運営されていることです。これは障がいや難病を持つ人が雇用契約を結び、支援を受けながら働く仕組みで、最終的には一般企業で働くことを目指します。TERASを運営するTOMOS companyは、代表の飯島亮さんが障がい者との交流をきっかけに立ち上げた会社で、就労支援を本質的に事業化することを目標に掲げています。

飯島さんがキャンドルアーティストとして活動していたこともあり、TERAS創設当初はキャンドル制作からスタートしましたが、やがて、開拓の余地があり、ものづくりが盛んな栃木の地域文化にも相性が良い「刺し子」へと舵を切りました。

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文=前澤知美(前半)、安西洋之(後半)

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